先日のあるスポーツドキュメンタリー番組で知り、心踊らされました。

原作は「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」(マイケル・ルイス著)
チームのGMとなったビリー・ビーンが、それまでの常識を覆す統計学的な見地から分析した戦略で、
MLBオーランド・アスレチックスを1990年代後半の経営危機から救い、強力なチームを創った
というストーリーです。アスレチックスといえば、松井秀喜選手が現在所属しているチームです。
彼の狙いは、「低予算でいかに強いチームを作るか」ということでした。
当然、打率・本塁打・打点の高い野手や、防御率・奪三振・被安打数の少なさにおいて優秀な
成績を収める投手の年俸は高く、とても球団の経営状態では雇うことはできません。
そこで、彼は何を考えたか?
ビーンは「野球は27個のアウトをとられるまで終わらない競技」と定義づけ、
それに基づいて勝率を上げるための作戦を練りました。
その結果、本塁打でも安打でも打点よりも、出塁率の高い打者の獲得や、
勝利数や奪三振数や防御率よりも、ゴロを打たせる率の高い投手の獲得こそが
「勝てるチーム」づくりに重要だという結論に達しました。
なぜなら、旧来の野球の価値観や選手の評価制度では焦点がそれほどあたることのなかった
「出塁率(四死球数)」や「ゴロを打たせる率」の高い選手は、無論年俸が低かったからです。
ビーンは膨大なデータの回帰分析から「得点期待値」を設定し、これを上げる
パフォーマンスを発揮する選手≂ 良い選手 と定義し、評価基準を抜本的に見直しました。
そして短期的な改善を繰り返すことで、アスレチックスをプレーオフ常連のチームにし、
一躍、彼の手腕は注目を浴びることになったのでした。
弱小チームが、スタープレイヤーが集う強豪チームを破るという、
漫画にありがちなドラマがわずか10年くらい前に、実際に起きていたんですね。
うまくいっている時ほど、水面下に潜んで音もなく進行する、悪い兆候に気付かない、
うまくいっていない時も、目を凝らせば、良くなるためのヒントや信号が身近にあったりする
という言葉をよく耳にします。
「重要じゃない」「常識的には度外視していい」「大勢に影響ない」「そんなもんでしょ」
など、誰しもがつい見落としてしまいがちな些細な数字にこそ、何かのヒントであったり、
逆に重大な予兆、警告が隠れているかもしれません。
それを発見し、良い方向にもっていくプロセスを存分に楽しみたいと思います。