「衆院〝解散断念〟報道で窮まる進退「ポスト岸田」急加速 高市氏、石破氏、上川氏も…ライバル不在「首相は続投あきらめていない」」
岸田文雄首相(自民党総裁)は、今国会中の衆院解散を見送る方向で調整に入った。
党派閥の裏金事件や内閣の政策などに、国民が厳しい反応を示すなか、解散断行は困難との判断に傾いたようだ。国政選挙や地方選挙で、自民党支援候補の落選が続いていた。
岸田首相は9月の党総裁選を見据えて、早期の衆院解散・総選挙で勝利する戦略を立てていたが、一部の情勢調査では「自公与党で過半数割れも」との結果もあった。
岸田首相自身は政権延命に執念を燃やしているが、読売新聞は5日朝刊で「解散、総裁選以降に」と報じた。これで「ポスト岸田」への動きが急加速するとの見方もある。信頼失墜した自民党を立て直すのは誰なのか。
「今は、政治改革をはじめ、先送りできない課題に専念している。それらにおいて結果を出すこと以外のことは考えていない」 岸田首相は4日朝、報道陣に官邸でこう語った。
朝日新聞が同日朝刊の1面トップで、「今国会の解散見送り」「支持率低迷で判断」「9月の再選戦略に影響」などと報じたことを受けての回答だった。
ときに唇をかむような厳しい表情も見せた。
さらに、読売新聞は5日、冒頭の記事を報じた。裏金事件や、それを受けた内閣支持率低迷により、4月の衆院3補選や、5月の静岡知事選で連敗を重ねたことが大きいようだ。
通常国会は23日に会期末を迎える。衆院議員の任期は来年10月30日まで。
党総裁任期は今年9月末のため、岸田首相が総裁選前の国会会期末に、衆院解散・総選挙に踏み切るかが焦点となっていた。
自民党の中堅議員は「岸田首相は『ここでの勝負は無理』と判断した。実際、党内には『岸田首相の顔では選挙に惨敗する』と恨み節が充満している。
一気に『岸田降ろし』が急加速するのではないか」と語った。
一方、ベテラン議員は「首相の解散権は『伝家の宝刀』であり、公認権や資金の配分権と並ぶ、『求心力の源泉』だ。会期末解散をあえて見送ったということは、総裁選で『勝ち抜ける』と判断しているのではないか」とみる。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が5月18、19日に実施した合同世論調査では、次期首相にふさわしい議員は、石破茂元幹事長(16・2%)、小泉進次郎元環境相(14・1%)、上川陽子外相(6・8%)、河野太郎デジタル相(6・6%)、高市早苗経済安保相(6・2%)、菅義偉前首相(5・0%)と続いた。岸田首相は4・6%だった。
青山繁晴参院議員も総裁選出馬を明言している。
この状況をどう見るのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は続投をあきらめていない。難局を切り抜け、『1日でも長く首相を続けたい』というのが本音だ。総裁選も何とか切り抜けたい思っている。決定的な有力候補がいないなか、一か八かの解散総選挙ではなく、まず総裁選再選にかけた」と見る。
確かに、岸田首相自身への支持も低いが、自民党内には突出した「ポスト岸田」は見当たらない。
政治評論家の小林吉弥氏も「衆院補選や地方選にことごとく負け、自民党の逆風は想像以上だ。総選挙なら『自公過半数を割ることもあり得る』とそろばんを弾いたのではないか。党内では、『政権維持すら難しい』という考えが圧倒的になり、『岸田首相による解散総選挙を阻止するほかない』という空気が盛り上がったのだろう。
来年7月の衆参ダブル選挙までに立て直しを図ることではないか」と指摘する。
■ライバル不在で岸田再選か
それでは、総裁選の行方はどうなりそうか。
前出の有馬氏は「石破氏は、世論の人気で常時1位だ。本来なら『選挙に勝てる候補』だが、党内に支持が広がり切れていない。河野氏も同様に支持が広がっていない。初の女性首相候補としては、前回総裁選でも健闘した高市氏と上川氏だ。『実績』のある高市氏と、『安定感』のある上川氏という評価だろう。反岸田の急先鋒(せんぽう)とされる菅氏の動きも注目だが、党全体のことを考えて動くのではないか」と指摘する。
小林氏は「河野氏、小泉氏、高市氏、上川氏と、名前は踊っているが、いずれも強力なバックアップはない。
本人の戦略や政権構想も見えていない。現時点では岸田再選の可能性が高く、岸田サイドもそう考えているだろう」と分析する。
前出の産経新聞・FNN世論調査で、次期衆院選後の政権の在り方について尋ねたところ、「今の野党を中心とした政権交代」(48・7%)で、「自公中心の政権の継続」(39・8%)を上回った。
「岸田続投」で、国民は納得するのか?