円安 ~ プライド[No.331] | 起業して不安はあるもののワクワクしている50歳・IT技術者・中小企業診断士のブログ

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GWに入り少し時間が出来たので、移動できるオフィスとして利用出来そうな海外のキャンピングカーを見に出かけた。どうして海外製なのかというと、かねてより、お気に入りの場所に車で移動し、車中に宿泊しながら休日を満喫する文化が根付いている国で生産される車はどことなく居住空間としての洗練を感じていたので。しかしこのところの円安で、店主も、車両の仕入れ値がハンパないと嘆いていた。昨日、1ドル158円台まで下落した。34年ぶりの水準だ。今朝のニュースで海外からの訪日客が4万円の宿泊費なんて大したことない!と余裕の笑顔を見せる一方、日本人の国内旅行客は2、3万が限界・・・とひもじいコメントを残していた。

 

 

僕がまだ若かった頃の日本の物価は世界の中でも有数の高さだった。マクドナルドのビックマックの価格を基準に国際比較され、日本での、その高さが語られていたことを記憶している。しかし今となってその指数はベトナムのそれとほぼ同等である。ベトナムといえば優秀なIT技術者を比較的安価にソフトウエア開発を依頼できるオフショアリングなんて言葉が10年くらい前までは聞かれていた。でも、もはや死語なのかもしれない。彼らの、「その報酬では・・・」な声が聞こえてきそうである。日本人技術者で開発した方がコスト的にリーズナブルな、そんな残念が刻一刻と迫っている。

 

そんな日本の通貨である円の力が低下する中、アメリカやオーストラリアに出稼ぎに行く日本人が増えているらしい。英語がペラペラで、MBAを保有しているようなエリートではない。料理人やウエイター、職人といった一般的な職業である。昭和の農業の閑散期である厳冬の時期に雪国から東京に出稼ぎにくる建設作業員のように。僕もここ数年でドルを報酬として受け取れるようになりたいと本気で思うようになった。だって効率を考えたらそう思わざるをえないから。欧米の先進的なビジネスモデルを日本に持ってきてローカライゼーションというスパイスをパッパってかけて素早く儲けるかつてのタイムマシン経営のように。

 

そんな安くなってしまった日本だけれども(だからこそ?)、株価はこのところ堅調(ここ数週間は一休みだけれども)で、さらに賃上げの勢いも増している。が、しかし、円安も影響してか物価高騰がハンパない。政治家、エコノミストは、デフレ脱却でハッピー!な雰囲気満々だけれども、僕は素直に喜べない。物価の上昇分ほどには収入は増えていないから。購買力低下。むしろデフレの頃の牛丼290円の頃が、懐かしく思い出される。収入に乏しい学生時代の薄汚い定食屋での思いを寄せていた女性との最高の食事のように。大企業のサラリーマンであれば、賃上げ交渉は不要だ。賃金が安いと優秀な人から敬遠されてしまうものだから、企業が他社に劣らないように競い合うことで賃金の上昇圧力が生じる。その一方、僕のように大企業に所属していないと、自ら顧客に報酬上げを要求していかないといけない。非常に億劫である。「5%の報酬アップをお願いします」に対して「残念ではありますが、あなたからその価値は感じられません」が怖すぎるから。

 

貨幣価値は往々にして実質的ではなく、より名目的である。

 

先日、自動車メーカーの系列の仕入業者に対する買い叩きの商習慣が報道されていた。本当に嫌らしいな・・・と思わされた反面、競合に対して差別化された強みがないと低く見られて悪条件での取引を強いられるのも、交渉上やむを得ないのが実情なのかもな・・・と過去の自分と照らし合わせながら感じてしまった。企業の成長秘話を紹介するテレビ番組で、洋菓子を製造販売しているシャトレーゼの創業社長が商品を店先に置いてもらうために、店から金の腕時計をとんでもない価格でつかまされた、そういうのが悔しくてたまらなくて自ら販売店を設けた、そんな話を、いわくつきの金の腕時計を輝かせながら堂々と語る姿に強い爽快感を覚えた。

 

自分〝安〟に陥ると、無理が効くとか、長時間に耐えうるとか、すぐに動ける、そういうとこで勝負しないといけない。本当、心身にこたえる。それでは、安くみられないようにどうしたらいいか?僕は少し背伸びした自分を見せるくらいで丁度いいように思う。過度な円安を牽制するための日銀による掟破りな円買い介入のように。背伸びした自分を受け入れてくれたクライアントへの恩を裏切らないために、背伸びを等身大にすべく必死になる、そんなんでいい。余人をもって代え難い、あなたでなければダメなんだ、そう認めてもられるよう、ある程度のスピード感を伴いながら自分の強みを磨くことで、ライバルに対して、そんなには負けることはないだろう、といったところまで差別化できたらと思う。控えめが素敵とか牧歌なこと言ってたら機会に逃げられてしまう。

 

幸運の女神には前髪しかない(早く掴まないと逃げられてしまう)

古代ギリシャのことわざ

 

プライドを感じるDavid Bowie