安定 ~ ローリスク・ローリターン[No.327] | 起業して不安はあるもののワクワクしている50歳・IT技術者・中小企業診断士のブログ

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 徳川家康が豊臣家を滅ぼし天下を手中に治めた後、戦時から平時へ状況が変わる中、安定した長期政権の構築のため、能力よりも年功を重んじる政策への移行について先日の歴史番組で紹介されていた。例えば基本的に跡取りを長男にすることで無用な跡目争いを避けた。また職業(身分)は永代的に固定化された。武士の子供は例え戦闘能力や統治の才能が???でもずーっと武士でいれたし、農民はどんなに才能があっても何代にも渡って田畑を耕していかなければならなかった。安定した販路が確保されている現代の企業において、新たな商機を見出すためのちょっとしたリスクテイクが、守旧派によってことごとく無謀と烙印を押され、潰されてしまうように。

 

安定との引き換えの膠着

 

 家康の目指した子孫による安定的統治の継続のためのテクニックが今の日本人の心に通底されてしまっていることが、安定を好み、挑戦を躊躇する昨今の状況を生み出している、そんなことが歴史番組で語られていた。30年前のバブルの時と比べて今の日本企業の世界の中での地位の凋落は凄まじいものがあるが、国内での序列は恐ろしいほどに、その当時の面影が残されている。新興に乏しいから。江戸時代に「分をわきまえる」ことが妙に重視され、逆に自分の身分にそぐわないことに対する周囲からの圧力が凄かったようだ。このようなことも今の日本に随分と残っていて停滞の原因の大きなところを占めている気がする。私もやってみよう!なことに対して「お前では絶対に無理!おとなしくそこに留まっていろ!」といった嘲笑含みのブレーキをかけられる言葉を幾度かかけられたことがある。

 

わきまえないSex Pistols

 

 丁度、今、終身雇用制度が壊されている真っ只中である。かつては1つの会社に勤め上げることが当然で美徳とされていた。一 つに 止 まるで 正 しい とか、一所懸命の意味が、武士の「一か所」の領地を命がけで守る精神に由来し、一社懸命なんていう会社人間を表現する言葉もあった。ところが、今現在、転職を促すための教育訓練に国のお金の多くが注がれている。似たような話で、自己都合による退職者への失業保険受給までの期間を短縮する方針が最近、厚労省より示された。さらに長期勤続労働者の退職金課税に対する軽減措置の撤廃が議論されている。このような中、多様な職場で力を発揮できるポータブルスキルに注目が集まり、移動出来る力が尊ばれるようになった。反対に1つの会社で社内政治の強さだけで生き残っているような人を危ぶむ声が強くなっている。

 

 年末だ。毎年のように一年を振り返る。そんなにダメではなかった。大きな痛みを伴うような失敗も、これと言って誇れる成功もない安定した一年。特に何かが足されたわけではない。そんなふうに考えると、少しやり残した感のある一年だった。でも、ほんの一年で劇的に進化したことなんて、今までの記憶にない。なりたいイメージを持ちつつ、それに向けた少しずつ少しずつの毎日の積み重ねによって、少しずつ少しずつ変われたように思う。長期のリスク分散によって確実な利益が期待できそうな、つみたてNISAのように。

亀の歩みはウサギより早い、絶対に。