サバイバルな半日観光 前編 | Sonia's Travels

サバイバルな半日観光 前編

パリに到着したのは朝6時。空は今にも雨が降り出しそうな灰色の雲で覆われていた。

空港からタクシーに乗ってホテルへ。チェックインの時間にはまだ早かったので、トランクだけをフロントに預けて近くのカフェで朝食をとった。

午前中は、ルーヴル美術館で絵画鑑賞。午後は、予め申し込んでおいた市内半日観光ツアーへ。

夫も私もパリは過去に何回か来ているので、今さら観光バスに乗る必要もなかったが、息子のJerryにとっては初めてだ。パリの全体像を把握させる意味もあって、バスツアーに参加した。

いくつかあるツアー会社の中から選んだのは、シティラマ社の「パリ・セノラマ半日観光」


ツアーの内容は、

14時15分にシティラマ社をバスで出発し、車上からパリ市内の南西部分を観光。

その後、バスを降りてセーヌ河クルーズ。

最後に、エッフェル塔に上り、18時頃シティラマ社で解散。


ところが、このツアー。予定表からはうかがい知れない、とんでもないサバイバルなものだったのだ!


鮮やかな黄色い車体の2階建てバスに乗り、さあ出発♪

総勢40人ほどの観光客の中で、日本人は私たち親子だけだった。ガイドは20代前半とおぼしき美しいフランス人女性。フランス語・英語・イタリア語・スペイン語を話す才媛だ。夫に向かって、「英語は話せますか?」と質問してきたので、彼は胸を張って「オフコース!」と答えていた。海外で仕事をしているのでこういう時は頼りになる。

折悪しくも、空からは大粒の雨が落ち始めた。せっかくの市内観光だというのに、濡れたバスの窓からでは景色がよく見えない。



エッフェル塔
エッフェル塔


40分間ほどバスに乗り、エッフェル塔近くの遊覧船乗り場で下車。

さあ、ここからがサバイバルの始まりだ!

こんな天候にもかかわらず、船着場は様々な旅行会社からの観光客でごった返していた。私たち「セノラマツアー」客は胸のあたりに黄色い蛍光色のシールを貼らされた。ツアーの目印である。

乗船口にはすでに長蛇の列ができていて、着いたばかりのバトー・パリジャンは乗客の入れ替え中だった。でも、列の最後尾に並んでいた私たちツアーメンバーは、定員いっぱいになったその船に乗れなかった。

恨めしい気持ちで動き出した船を見送っていると、私たちのツアーガイドが現れた。

次の次の船に乗ってください」

と、4ヶ国語を駆使してツアーメンバー一人一人に告げて回っている。

なぜ、”次の次”なんだろうか? 今の立ち位置からすれば、”次”の船には楽勝で乗れるのに。質問したくても、ガイドの姿は人ごみにまぎれて見えない。

屋根はあるものの、冷たい風が吹きすさぶ屋外の乗船所に立ち続けること約40分。我慢も限界である。次の船が到着して列が動き出した時、

「寒くてもうこれ以上は立っていられない」

と、私たち親子は指示に従わずに乗り込んでしまった。



バトー・パリジャン
バトー・パリジャンの座席


船内の座席には全部赤いカバーがかかっている。よく見ると、救命胴衣であることがわかる。

そして、椅子の肘掛部分のシルバーの物体は、電話の受話器のような形をしたイヤホーンだ。手で引っ張り出して使う。イヤホーンには数字が書かれたボタンがいくつかあって、いろいろな言語に対応している(例えば、1番は英語、2番はロシア語など)。これを通して観光案内のナレーションを聞く仕組みになっている。



オルセー美術館
オルセー美術館


歴史的建造物を船から眺めるのは初めてのことだ。私たちは右側に座ってしまったが、美しいシテ島を眺めるには左側の座席がいいようだ。

1時間かけてセーヌ河を遊覧し、もとの船着場にもどってきた。

下船して、さてどうしようかと思っていると、あらっ? あの美人ガイドがニコニコ顔で立っているではないか。指示に従わなかった私たちのことを咎めるどころか、

「船はどうでしたか?」

なんて気さくに話しかけてくる。やはり同じ船に乗り込んでいたツアー客が何人かいて、私たちと合流した。

すると、ガイドは人数をろくに確認することもなく、

「それではエッフェル塔に向かいます」

と宣言したのだ!


エーッ!!!???