SKZの音楽性を讃えるSound Mosaic

SKZの音楽性を讃えるSound Mosaic

Stray Kidsの音楽性をこよなく讃えるブログです。主に2020年以降のアルバムからランダムにMVを取り上げて深掘りしていきます。更新は週3回程度のスローブログ。読んでくださってありがとうございます。

 

 

韓国語で「神메뉴」日本語で「神メニュー」

これは「神がかったメニュー」「神業のようなメニュー」つまり「ものすごく素晴らしいメニュー」という意味だとすぐわかりますね。

 

英語訳の「God's Menu」には、「~の」の意味のアポストロフィSがあるので、韓国語・日本語とちょっと違って「神様のお食事メニュー」的な感があります。

 

また、英語のGodには「神様」の意味しかなくて、「神がかった」「神業の」はdevineとかmiracleとかfanatical が使われる。なので、God's Menuというタイトルを初めて聞いたときには、「これは西欧社会ではちょっと問題視されるかも」と思いました。

 

そこで2020年発表当時のSNSやリアクション動画を探してみると、やっぱり、God's Menuというタイトルについて、不謹慎だとか、宗教色がないのに「神」を持ち出すのはどうかとかいう意見が多数見つかりました。

 

でも曲中では一切、神様のお食事メニューについてなんて歌っていない。「神」と言ってもあのGodのことではないようだとわかってきて、この曲は宗教とは関係ないものとして定着してきました。

 

自らの言葉のコンセプトのままで進むことが、いつのまににか受け入れられています。

こういうところもSKZの面白さのひとつ。

 

同様な現象に、SKZ特有の造語があります。Chronosaurus, Hellevator, Oddinaryなどなど、二つの言葉をつなげてSKZが作った言葉です。

 

二つの言葉をつなげてひとつの単語になったものはPortmanteau (ポートマントウ)と言って、英語にもたくさんあります。

 

Portmanteau100例

 

でも英語のPortmanteauは例えばsitcom, adware, webinar など、通常続けて言う2つの単語が縮まってひとつになった、という「面倒だからひとつにしちゃえ」的なものばかり。

 

これに比べてSKZのPortmanteauは、二つの気持ちや側面を合体させて新たなコンセプトを生むものばかりです。私は特別感満載で愛情あふれる単語 youtiful(you + beutiful)がお気に入り。

 

これらSKZ特有の、らせん状の造語もまたすぐに受け入れられて、SKZが作り出す世界観のDNAのひとつとなっていきます。

 

閑話休題、タイトルに浸るのはこのへんにして、God's Menuの世界に入っていきますね。

 

前奏4小節のうち、3回繰り返されるののはこのパターン、ファソドソで、ソは両方フラットが付くもの。(臨時記号は、出現以降同じ小節内で有効のため、最後の音もソ♭)

 

これを全く同じ音ながら、このように記述してしまうと、音は間違いないけれど、歌いにくい。

その理由は、シャープのあとは上がりたい、フラットのあとは下がりたい、という性質があるからです。ファファと同じ音の名前を歌いつつ、二つめのファは半音上というのもむつかしい。そして繰り返すと、小節最後のファのシャープから小節最初のシャープなしのナチュラルなファになるところもむつかしい。

 

それだけでなく、God's Menuがヘ短調だということも多いに関係あります。ヘ短調と仲良しななのは、5つ上のハ短調(♭3つ)と4つ上の変ロ短調(♭5つ)です。

変ロ短調の♭はヘ短調の♭にひとつ足しただけで、それは「ソ♭」

 

なのでこれを変ロ短調に書き直せば、臨時記号なしでいけます。

 

ということは、God's Menu はヘ短調なのにいきなり変ロ短調で始まってしまう特殊なケース。

 

さらに変ロ短調を装いつつも、ヘ短調の主音である「ファ」が強拍(=1拍目)にドスンとおさまって、これは変ロ短調じゃないよと主張しています。

 

音同士のせめぎあいがこの一小節にぎちぎちに詰まっている。そのために、この繰り返しによる前奏は、とてつもなく不安で戦闘的で、そこにサイレンがウワンウワンとかぶってくるのだから、たった4小節で何が始まる期待と恐れでいっぱいになります。

 

この音列考えたの誰?天才。