国内のバイク離れに歯止めをかけようと、二輪車大手がてこ入れに躍起になっている。ホンダは車体共通化でコストを抑えた世界戦略車をタイから相次いで“逆輸入”し、ヤマハ発動機はユーザーの環境意識の高まりを背景に電動バイクを投入。各社は従来とコンセプトの異なる新車を投入することで需要を喚起し、撤退の瀬戸際にさえ立っている国内生産の維持につなげたい考えだ。
「こんなに売れるとは思わなかった」。東京・環八通り沿いにある「ホンダドリーム世田谷店」の白畑晋店長の表情は明るい。ホンダが3月に発売したスクーター「PCX」(排気量125cc)の売れ行きが好調で、販売現場に久々の活気をもたらしているからだ。予約が埋まり、「納車を2カ月待ってもらったケースもある」(白畑店長)という。
PCXは、新興国の生産拠点から同一車種を輸出するホンダの世界戦略車の第1弾で、タイで生産して日本、米国、欧州、韓国などで販売している。これまでの地域別に車体を開発、生産する体制ではコストの圧縮に限界があるため、車体を共通化したうえで人件費などが安い新興国での生産に切り替え、価格競争力の高い世界戦略車として攻勢をかけることにした。
二輪車の国内販売を手掛けるホンダモーターサイクルジャパンの井内正晴社長は「顧客のニーズに応える商品を安く提供すれば、販売が活性化することが再確認できた」と話す。
ただ、かつて「庶民の足」として人気を集めた二輪車の国内出荷台数は、少子化や軽自動車への需要シフトなどで減少の一途をたどっている。09年の出荷台数は38万台と1982年のピーク(329万台)と比べて1割強にまで落ち込んだ。
これに伴い、世界一だった国内生産も縮小。1981年の741万3000台を頂点に減少が続き、93年には生産台数世界一の座を中国に明け渡した。その後も円高や新興国市場の成長などを背景に生産拠点の海外移転が進み、09年には64万台まで落ち込んでいる。
アイドリングストップ機能や最新の電子制御機能を備えたPCXは、国内生産の場合より数万円程度安い29万9250円という割安な価格を設定。国内の受注台数は発売から半年で約1万6000台と、年間販売目標の2倍に達した。その効果もあり、今年のホンダの国内二輪車販売台数は7年ぶりに前年を上回り、19万台強になる見込みだ。需要回復には低価格化は欠かせない。