季節は春だったと記憶している。


お腹が出てきた嫁は突如実家に帰った。


結局産まれるまで一度も帰ってくることはなかった。


実際は産まれて半年くらいは実家にいたので述べ一年別居


生活といっても過言ではなかった。


その理由がまた解せない。


家に一人で居て万が一倒れたりしたら大変だから~とか、


あなたは帰り遅いし居ても居なくても一緒でしょ~とか、


言われちゃいましたよ。ハイ


お母さんを呼べばいいのにという私の発言は無言のNOで


つき返された。この時点でワタクシの気持ちはかなり冷めていた。


いや冷めてなんかいない。怒っていた。


さらに嫁は通帳や印鑑、キャッシュカードを田舎まで持っていった。


その田舎はワタクシの住む町から片道4時間近くかかるところで


気軽に行けるところではない。


飲み会やお祝い事があったときは困った。


振り込んでくれと言ってもすぐには出来ない。田舎には都銀がナイ!!


ネットバンキングで入れてよ!実家はネット回線がナイ!!


とそんな調子でワタクシはお金の件で非常に恥ずかしい思いをした。


これは恨んでいる。


社員に「村長さんのところは貯め込んでいるでしょう~」


や、「奥さんにがっちり管理されてるんですか~?」


なんて言われた日には24時間落ち込んだ。。。


まだ、それなりに貯めていると信じていた。




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何とか落ち着きました。


妻子の住んでいたマンションを売却したり、


ワタクシの住んでいたマンションを引き払って引越ししたり。


車の名義変更などなど、結婚の何倍ものパワーを使って


事後処理しました。


敗戦処理のような焦燥感。


頑張ります。


村長



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妊娠を知ったのは会社だった。


年が明けて間もない寒い日、殺人的スケジュールをこなし一息ついた頃に


電話が鳴った。


「あ~私。今日病院行ったら妊娠してたよ」


「お~~やった~~!!   え?病院行くなんて行ってなかったじゃん」


「あ~検査薬で確認したら陽性だったから」


「ん?そんなのいつやったんだよ?」


「おとといかな」


言えよ。。。


なんで前もって教えてくれないのだろうか。


その言葉が口の中でゴニョゴニョとなり消えてしまった。


ワタクシは我に返った。


彼女は妊婦だ。


労わらないと、優しくしないと、励まさないと。


「じゃあ暖かくしとかないとな」


「そうね」


素っ気無い返事が気になった。


しかしワタクシは9ヶ月後に会えるであろう子供を想像しワクワクした。


子供は好きではないはずだ。我が子だと違うのか。


そんなことを考えながらワタクシは嫁との間にきっかけが出来たことを


素直に喜んだ。


これで彼女も変わってくれたらいいな。


そして少しニヤニヤしながら仕事に戻った。


つわりもそれ程酷くないようで日々が過ぎていった。


しかし食事を作ることもなく結婚前とは何も変わっていない。


変わったのは徐々に出てくるお腹だけ。


そして半年が過ぎた。。。


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