2024年9月3日(火)
第144回直木賞受賞作。
作品の舞台は明治時代初めの根津遊郭。主人公はこの根津遊郭の中規模店で働く番頭。元は徳川幕府御家人の家の次男坊。明治になり、武士は多くが零落し、生活の為に思いもよらぬ仕事についていたようです。
過去を捨て、自分自身を偽り、希望も持てぬ生活を送る主人公を、作者は川床で川の流れに漂う砂粒に例えたのでしょうか?何とも遣る瀬無く、もの悲しさが色濃く出ていました。彼のその後に何かしらの幸せが訪れることを祈ります。
根津遊郭というのは、僕も何度も行ったことのある根津神社の辺りにあったのでしょうか?遊郭での生活や仕来たりが詳細に書かれていて、作者の下調べの周到さに驚かされます。
作品紹介(集英社のサイトより)
江戸から明治に変わり十年。御家人の次男坊だった定九郎は、御一新によってすべてを失い、根津遊廓の美仙楼に流れ着いた。立番(客引)として働くものの、仕事に身を入れず、決まった住処すら持たず、根無し草のように漂うだけの日々。
ある時、賭場への使いを言いつかった定九郎は、かつて深川遊廓でともに妓夫台に座っていた吉次と再会する。吉次は美仙楼で最も人気の花魁、小野菊に執心している様子だった。時を同じくして、人気噺家・三遊亭圓朝の弟子で、これまでも根津界隈に出没してきたポン太が、なぜか定九郎にまとわりつき始める。
吉次の狙いは何なのか。ポン太の意図はどこにあるのか。そして、変わりゆく時代の波に翻弄されるばかりだった定九郎は、何を選びとり、何処へ向かうのか――。