6月15日(金)
某小説雑誌に掲載されていた評論家のコメントを読んで興味を持ちました。第20回大藪春彦賞受賞作。
主人公は、大学院まで心理学を専攻し、学校のスクールカウンセラーになった31歳の女性。彼女が対峙する2人の男との関わりが本作品のコンテンツです。一人は、学校の生徒で、「人を殺したい」という衝動を抑えることに苦悩する高校1年生。もう一人は、彼女の出身である長野県の中学校で教育実習生であった男で、その後彼は3件の少女暴行事件の犯人として実刑を受け、出所し、彼女の近所でひっそりと生活している。
人を殺傷したいという衝動を持つ者を嫌悪する人達の心情を理解しながらも、然しどんな人間にも生きていく権利があるはずだと考える主人公は心の中で彼らへの恐怖を持ちながらも心の葛藤を悩むという展開です。本当に考えさせられる作品でした。
講談社発行。339ページ。
作品紹介(講談社のサイトより)
小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早のもとに現れた高校1年の生徒・野津秋成は、ごく普通の悩みを打ち明けるように、こう語りだす。
「ぼくは人を殺してみたい。できるなら、殺すべき人間を殺したい」
千早の住む町に、連続一家監禁事件を起こした入壱要が暮らしていることがわかる。入壱は、複数の女子高生を強姦のうえ執拗に暴行。それでも死に至らなかったことで、懲役15年の刑となり刑期を終えていた。
「悪はある。悪としか呼びようのないものが」
殺人衝動を抱える少年、犯罪加害者、職場の仲間、地域住民、家族……そして、夫婦。
はたして人間は、どこまで「他人」を受け入れられるのか。
社会が抱える悪を問う、祈りに溢れた渾身の書き下ろし長編。