柚月裕子「蟻の菜園」 読了 | ソンブーンのブログ

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3月1日(水)

 

柚木裕子の本を読み始めて8冊目です。本作品も期待を裏切らない内容だった。

著者は、犯罪の動機こそが重要だと述べていますが、本作品においても、犯人である女性の生い立ちと少女時代の生活に犯罪の遠因があります。

 

アルコール依存症になった父親による虐待、小型ワゴン車内での父と姉妹の3人の生活、果ては父親によって実の娘達の強姦という普通の子供にはあり得ない、過酷な運命が犯人にさせてしまったのか知れませんね。

 

豊かになったと言われる現代日本においても過酷な環境に耐え忍んでいる子供達がいるかもしれないと思うと、「何とかして彼らを救い出す方法は無いのか?」と叫びたくなります。

 

宝島社発行。436ページ。

 

作品紹介(河北新報のサイトより)

インターネットの「婚活サイト」に関連した連続不審死事件を題材に、第15回大藪春彦賞を受賞した山形市在住のミステリー作家が描く、受賞後初の長編サスペンスだ。

東京と千葉の境の山中で、50代の男性の遺体が発見される。当初は練炭自殺と見られたが、千葉県警は交際していた女を殺人容疑で逮捕する。男性は女の口座に500万円を振り込んでいた。

女の名は円藤冬香。美貌の介護士で、ほかにも複数の男性と交際し、何人かが不審な死を遂げていた。冬香は容疑を否認している上、完璧なアリバイがあった。冬香の人生と犯行の動機に興味を持った週刊誌のフリーライター今林由美は、事件の取材を始める。

望めば苦もなく結婚できそうな冬香だが、事件の様相に反し、生活は質素で孤独。勤務先の老人ホームの入所者や職員に慕われていた。由美は冬香の過去を追い、景勝地東尋坊で知られる福井県三国町を訪れる。そこには、想像を絶する冬香の過去が隠されていた。

由美の取材と、三国で起きた過去の出来事が、章ごとに交互に語られる。過去と現在がつながり、疑問が解き明かされたとき、冬香が抱える深い闇が浮かび上がる。

題名は、南米のアリと植物の生態からとった。樹上の巣で、寄生植物をえさに生きるアリと、アリから栄養を得る植物の共生関係を、登場人物が共依存する姿に重ねた。

人を安易に断罪せず、冬香と周辺人物の行動を丹念に追う由美のいちずな姿が際立つ。事件の本質にたどり着いた末の選択に、一筋の光明を見る思いがする。虐待や貧困の連鎖の中で、子どもや女性など弱い立場に立たされがちな人をどうやって救うのか。著者は現代社会にそう問い掛ける。