1月22日(日)
柚木裕子の作品を貪るように読んでいます。「孤狼の血」、「臨床真理」、「最後の証人」と読んできて、4冊目が「朽ちないサクラ」でした。サクラとは、公安を意味する符丁だそうです。
3冊目に読んだ「最後の証人」と比較すると、事件の背景にある人間の業・殺意等に共感出来なかった。オーム真理教を思わせるオカルト集団と彼らの監視している公安警察という馴染みの薄い集団というのは、真の主役だったせいかも知れません。
徳間書店発行。315ページ。
作品紹介(河北新報の新刊レビューより)
警察がストーカーの被害届の受理を先送りし、被害者の女子大学生が殺された。事件の直前に署員が慰安旅行に出掛けていたことを報じた新聞記事がきっかけで、一人の記者が不審な死を遂げる。
親友である記者のため、県警の女性職員が手探りで事件の謎を追う。山形市在住の大藪春彦賞作家による異色の警察小説だ。
森口泉は米崎県警広報広聴課の29歳の事務職員。東京で働いていたが、女手一つで育ててくれた母が病になったため帰郷した。同課に職を得て4年になる。県内の警察署がストーカーへの対応を先延ばししたまま署員旅行に出掛け、ストーカー殺人が発生したとする記事が、地元紙に載った。県民からの抗議の電話と記者クラブの対応に忙殺されながら、泉は自分が不用意に漏らした話を基に、同紙記者の津村千佳が記事を書いたことを疑う。
千佳は泉の高校時代からの親友。泉は千佳を問いただすが、千佳は「信じてほしい」と関与を否定。記事の真相を調べると言い残して姿を消す。程なく千佳は遺体で見つかった。
親友の理不尽な死に対する悲しみと憤り、友を疑ったことへの罪悪感に苛まれながら、泉は同期の刑事・磯川の助けを借りて、千佳の死の真相を調べ始める。
事件は、警察内部の抗争や複雑な人間関係、狂信的カルト教団の暗躍も加わり思わぬ方向へ進む。警察組織の中で渦巻く派閥の思惑や、しがらみや葛藤を抱えつつ、自分の役目を全うしようとする人物の姿が鮮やかに浮かび上がる。
著者の「最後の証人」などでおなじみの地方都市・米崎市を舞台にした。泉をはじめ、泉を支える磯川や、やり手の公安刑事だった上司の富樫など人物の造形が興味深い。最後に主人公が下す決断に、警察で働く人間の誇りと信念を垣間見る思いがする。