昨夜は満月でした。この時期は寒く空気も澄んでいるので、とても綺麗な満月だったのではないでしょうか。
古来、月に想いを馳せる様子を描く詩が多いです。それは地上のどこにいても空を見上げれば月は見え、あなたも同じように月を見ているだろう…と思うことができるから。。
長相思 李白
長相思,在長安。 長相思,長安に在り。
絡緯秋啼金井闌,微霜淒淒簟色寒。 絡緯秋啼く金井闌,微霜淒淒簟色寒し。
孤燈不明思欲絶,卷帷望月空長歎。 孤燈明かならず思絶えんと欲っす,帷を巻き月を望んで空しく長歎。
美人如花隔雲端,上有青冥之長天。 美人花の如く雲端を隔つ,上には青冥の長天あり。
下有淥水之波瀾。天長路遠魂飛苦, 下には淥水の波瀾あり。天長く路遠くして魂飛ぶこと苦なり,
夢魂不到關山難。長相思,摧心肝。 夢魂到らず關山難し。長相思,心肝摧く。
長く相思うところは、都の方にある。自分はとこしえに輦轂の下たる都を忘れない。頃しも秋深く、金を鏤めた井戸側の辺では、キリギリスが頻りに声を立てて啼いているし、微霜がひやひやして、今まで敷いていた簟の色さえ寒くなったようである。この時にあたり、半ば明らかにして未だ滅せざる孤燈を挑げ、堪えぬ愁いを懐きつつ、帷を巻き上げて月を望み覚えず長歎の声を発した。そは何故かというと、我が思うところの花の如き美人は遠く雲端を隔てて、天涯にいるからである。されば、美人のいるところへ行きさえすれば善いのであるが、それが容易なことではなく、上には蒼々として限りも知られざる長天があり、下には澄める水の上に波瀾を生じて、とても行くことができない。かくの如く天は長く路遠きがゆえに、夢中の魂すら行くことはむずかしい。そこで、徒に長く相思うて、心肝を摧くのである。