「痛いってば!!」
ヌナの大きな声に、僕は我に帰った
肩を掴んでいた力が緩むと、ヌナはすっと僕から体を脱け出し窓際に立つ
薄く色づいた頬
濡れたままの黒髪
無防備なルームウェア
今にも、抱きしめてしまいそうになるくらいヌナは…いや、スヨンは魅力的だった…
そのスヨンの全ては、もう…
ヒョンのモノになってしまったの?
その瞳に映るのは僕ではなくて、ドンヘヒョンなの?
その体に…
そのくちびるに…
今にも触れてしまいそうになる気持ちを
必死に押さえつけていた
「キュヒョナ、何があったの?」
『・・・』
「ドンヘさんが、どうしたの?」
ヌナの言葉は優しい…
まるで、大切な事を語り掛けるように
僕を見つめながら話してくれる
あの頃のようだな…
まだ、幼かった頃
お互いに相手を意識なんてしてなくて
ただ、好きだった
チョコが好き!! とか…
犬が好き!! とか…
花が好き!! とか…
そんな、なんて事のない
無条件の好きって気持ちが、大切だったあの頃…
『ミアネ…』
「キュヒョナ、はっきり言うけど…」
『えっ…?』
「私、ドンヘさんと…」
『やっ、言わないで!!
言わなくても、いい…』
僕はヌナの口から出てくる言葉が怖くて、その先を遮った
『ヌナ…うん…ヒョンはいい人だよ…
きっと、ヌナを幸せにしてくれる…』
「キュヒョナ」
『僕…たまにはここに来ても、いい?』
「キュヒョナ」
『あっ、ヒョンに嫌がられるかぁ…』
呆れるくらい次々に言葉が出てくる…
ヌナの言葉を遮るように、僕は早口で言葉を囃し立てていたんだ
「キュヒョナ、聞いて!!」
『・・・』
ヌナの言葉が突き刺さる…
次の言葉が想像出来すぎて、どうしていいかわからなかった
「誰が誰と付き合ってるの?
私は、ドンヘさんと付き合ってないよ」
『…えっ…?』
ヌナの答えは意外な言葉だった
ドンヘヒョンとヌナは、もう付き合ってるもんだと思ってた…
なのにその答えは
“ 付き合ってないよ ”
その言葉を、僕は直ぐに受け止めることが出来なくて…
『…えっ…?』
もう一度、問い返した
「だから…
私は、ドンヘさんと付き合ってないよ」
『本、当に?』
「ほ・ん・と!!」
『だって、ヒョンと会ってるんでしょ?
ヒョンは、ヌナに言い寄ってるでしょ?』
「会う事は、会ったよ
ロンドンのお土産渡したいって、仕事終わりにお茶して、ただそれだけ
それに、言い寄られてなんて…ないよ…」
『マジ?』
「マジ!!(笑)」
僕、今スゴく恥ずかしいことになっている
顔だけじゃない…
体中熱くて、真っ赤に火照ってるのが
自分でもわかる…
「キュヒョナ、私ね…
ずっと昔の記憶だけど、どうしても忘れられない事があるの…」
ヌナが、とても優しい目をして話し出した
『何?』
「いつも私の傍に居てくれる人が居たの
悲しいときも、嬉しいときも…
辛いときも、自分が嫌になるときも…
そんな時、傍に居てそっと肩を抱き寄せて歌ってくれた…」
『えっ…』
「あの、甘い歌声が忘れられないの…」
『ヌナ…それって…』
「気がついた?
キュヒョナ…私はね…
あなたが、好きなの…」
『えっ…』
ヌナの言葉は、僕が想像していたモノとははるかに違っていて現実味をおびていなかった…
誰が誰を好きだって………?
えっ?
ヌナが好きって言ってるのは、
一体誰なんだろう…
「キュヒョナ…
私の気持ち、わかってる?」