「…い、つまでも…暑い…ね…」
『ヌナ…』
「先…行く、ね…」
『…ヌナ!!』
キミの横を通り抜けようとした、その時
抱き寄せられて胸の中に閉じ込められる
「ちょっと、何するの!?」
キミの腕を振りほどこうと
必死に体を捻ったけれど
抵抗すればするほど、キミの力は強くなった
「離して!!
誰かに…見られて誤解されたらどうするの!?」
『別に…』
「別に、じゃないでしょ?」
『別に、構わない…』
私の肩にキミの重みが加わって
甘い香りが私を狂わせそうになる
「ホントに…離して…」
『何が…あったの?』
「・・・」
『何か、あったんでしょ?』
「何も…」
『俺には、言えないこと?』
耳元で囁くキミの声が
少しずつ…少しずつ…
私の体を浸食していく
さっきまでうるさいほど聞こえていた
ソウルの街の雑踏が
まるで、スイッチを切ったように
何も聞こえなくなった…
『ヌナ…泣いてるの?』
「…えっ………」
自分でも気がつかなかった…
次から次へと溢れでる涙が
ドンヘの肩を濡らしている
「あっ、衣装…ご、めん…」
『大丈夫だよ、シャツは替えがあるから…
それより…
やっぱり何かあったんでしょ?大丈夫?』
「ドンヘには………関係ないから…」
『聞かせてよ…
指輪を外した事と…関係、ある?』
「えっ?…」
彼から離婚届を受け取った日
私はまず最初に、指輪を外した
長年、そこに在った印は
ほんの少し白く、影を残している
誰も、そんな小さな事
気づくはずなんかないと思ってた…
ドンヘの大きな手が
私の肩をそっと両手で包み込む
『気づいて、ないと思ってたの?』
「えっ………」
『もしかして…
あの夜の事、バレた?』
「違う!!
それに、あれは忘れてって言ったでしょ…」
『忘れられる訳、ないよ…』
じっと覗き込む、その瞳の中の自分を
私は見つけてしまった
“ 私は今、ドンヘを求めてる… ”
そう確信したとたん
自分が怖くて堪らなかった
年下の…
それも芸能界に身を置く
そんな人を好きになる
考えてもみなかった事なのに…