世界で一人の生存者になったら？

もしもみんなが
死んじゃって

あたしだけが
世界で一人の
生存者になったら
どうするだろう？

この小さな部屋で
ずっと一人で過ごすことに
なったとしたら

あたしはどうなるんだろう_

と妄想してみる。

最初はきっと
嘆くことだろう。

神を恨んで
さっさと迎えに来いと
癇癪を起こすかも知れない。

それから一人きりの悲しみで
涙にむせぶかも知れない。

そのうち諦めて
きっと一人遊びを始める
ことだろう。

そんなあたしの宝物は
あなたとの思い出。

記憶。

部屋に残されている
あの服やあの靴。

それを着て言った場所や
出会った人たち。

たくさんの
写真に切り取られた時間。

ああ、戻って来る
あの時、この時。

そしてそんなものを見なくても
全部が私の中に残っているんだ。

あなたを抱きしめた時に
触れ合っていない皮膚から
自分の皮膚に移って来るかのような
その熱。

匂い。

綺麗に化粧をした
あなたのマスカラが
黒い涙と一緒にとれて

薄くてひっそりとした
本物のまつ毛が
現れる瞬間。

怒って振り上げた両腕。

バカヤロウと
初めて声に出したその時。

ああ、本当に
どの瞬間にもあたしはあなたに
たくさんのたった一人のあなたに

恋をしていたみたいだ。

それくらいその時間が
愛おしい。

誰もいなくなり
もう誰とも喋れない。

本当に一人きりだ。

それでもあなたは
私の中で確かに生きている。

ちょっとムッとしたり
本当に面倒だと思ったり、

そんな時も含めて
これって宝物なんだ。

そんなことに気づく。

それは私が大切になどしていない
と思っている時間でさえ
いつだってそうだったことに
気づく。

生きてるって
なんて素敵なんだろう。

なんて特別で
なんて言う贈り物なんだろう。

私は久しぶりにまた
手にした

さほど弾けないギターを
ポロンポロンと鳴らしては

もう身体はここにいないあなたに
向かって歌う。

涙が出るよ。

それからギターを抱きしめて
また泣く。

一人が悲しいからじゃない。

たとえ身体がなくても
あなたを抱きしめたくなったから。

すでにあったあなたとの出会いが、
時間が

素晴らしすぎることが
ありがたすぎるから。

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