私はここにふさわしくない？

夕暮れの色が濃さを増し
夜へと繋がる頃、

似たような、
初めて見る景色の中
銀色のメルセデスのバンが
坂を下って走る。

突然のシャワーが（にわか雨のこと）
やって来ては
視界をぼやけさせる。

海に向かう坂道を
降り切ったかと思う頃

両側に植えられた樹々で作られた
ゲートの方へと車は
右折した。

その長いアプローチの間から
ところどころ光が見え

まるで一つまた一つと
星が光り始める宵の口の空を
思わせた。

プライベート飛行機で
ハワイ島から３５分。

昨夜ラナイ島に到着した。

ラナイ島へと
高度を下げていく手前、

虹が現れた！

私は少し興奮して
機内の人たちに声をかける。

しかしながら

ヘッドフォーンを
していたり

iPadをいじったりで
気がつかなかったのか

（エンジン音がしているし）

全員がスルー！

マイゴッド！

座席をシェアしているのは
とあるアジアの国のご家族。

夫婦と
男児と
乳児と
夫婦の母親らしき人

の５人。

そこの国の物価から言ったら
この旅ができるのは
その国ではすごいお金持ちだろう。

（事前に旦那と話をして国を聞いた）

はしゃがず、
落ち着いた雰囲気が
いかにも、である。

が、彼らの持ち物、
一つ残らずコピー商品（偽物）
なのが面白い。

旦那のバックパックも
妻のバーキンも
母親のルイヴィトンも！

すごい！

私はくじけずもう一度
声をかけた。

だって、虹なんですよ、
奥さん！

BIg　Dealだ！

「Rainbow!」

そこで私の隣に座っていた
夫婦の母親らしき人が一言。

「I know」

（笑）

騒がしい日本人は黙り
虹の写真を撮ることに専念する。

（笑）

そうしてフォーシーズンズホテル
ラナイへと入って行く。

Welcome Miss Hongo!

マゼンダの蘭の花の首飾りを
首にかけられる。

そうして歓待してくれた
1人のプライベートコンシェルジェが、

館内の説明をしながら
部屋まで案内してくれる。

サインは部屋に入ってからだ。

部屋への長い廊下を
歩く頃には

すっかり夜になっていた。

薄明かりの中
廊下の両脇の植栽が
ジャングルの中に

入って行くかのような
気持ちにさせる。

到着が夜でよかった。

暗さがこの場所にある
神秘を引き出してくれている。

ハワイアンスタイルの
内装は

写真にすると
地味に映るだろう。

が、

このホテルの建築と内装から
流れているのは、

ハワイの生の自然と
文化への敬意だ。

しかも、
米国に占領されてからの
エレキギター的ハワイアンではなく

土着のハワイ文化への
敬意だ。

それはトイレに飾ってある
絵一枚、

廊下のインスタレーション一つ、
からも感じられる。

私は超高級ホテルに滞在し
欧米化されたスタイルの中に
ありながらも

観光客のためのハワイ
以上のハワイを
なぜか感じられるのだ。

そうして５分以上歩いて
やっと部屋に到着すると、

そこには完璧な秩序が
あった。

全てのものが
あるべきところにあることの
美、

がそこにあった。

私は圧倒されては
思った。

「申し訳ない」

と。

「自分にはここにいる価値がない」

と。

家具も絵も、グラスも
何もかも本物で

調和の中にある。

私のような
存在自体が混沌、

の人間のいるべきところではない。

私の中のジャッジが言う。

それから

「ヒーリング」
「人の心、魂」

に関わって得たお金を
このような贅沢に使うことへの
なんとも言えない罪悪感を覚えた。

それなのに
ひっそりとここに泊まるのではく

早速Facebookライブで
公開してしまう私よ！

ライブ動画の中で
私が言っていた

「私は今夜お部屋じゃなくて
バスルームに寝ます、

なんならトイレの中で」

と言うのは
冗談と言っても
本当の気持ちが入っている。

雪のように白く
シワのないシーツ