性的な生き物 | 牧童の溜息

性的な生き物

「性欲も炬燵も出さぬままの部屋」 牧童

「私は58歳、主人は63歳。最近、主人が糖尿病のため性欲がなくなりました。今後、夜の生活がないのはとても寂しい」という悩みが、ある健康情報誌の相談に寄せられていた。

僕が若かった頃は、50歳を過ぎた女たちがセックスをしているとは思えなかった。女は灰になるまで、という話は聞いてはいたが、ジョークだと思っていた。
現在、僕は50代の女とつきあっているが、彼女はまだ若いし元気だ。 50代は男も女もまだ性的人間なのだ。

この投稿に対し、櫻井秀勲が回答している。櫻井氏はかつて『女性自身』『微笑』などの編集長として活躍し、女性学の神様とも言われた人だ。
櫻井氏の回答が面白い。
「男は20・40・60代の偶数年代ほど性欲が強く、女性は反対に10・30・50・70代の奇数年代に男を欲しくなるという説もある。 しかし糖尿病はそう簡単にはよくならないので、女性として夜の生活をあきらめるか、それとも外に男友だちをもつか、そのどちらかでしょう。 またセックスグッズも悪くありません。ともかく、チャンスに備えて、性器をいつでも使えるようにしておくことが肝腎です」

以上が櫻井氏の回答である。エロ雑誌にではなく、健康情報誌に堂々と書かれていた内容なのだ。

30代の男は疲れている奴が多い。年齢的にも衰えてくるが、それに仕事や家族の重責が加わるし、酒などの付き合いも多くなる。妻の魅力もなくなる。そして20代の自分と比較してしまうから、余計、落込んでいく。
40代になると、またゆとりが生まれ、まだまだいけそうだと元気になっていく。
女の20代は出産、育児重視に心身が変わっていく。また男と同様、若かった自分と比較することで、衰えに対する自己認識が高まることで、性欲が落込んでいく。

女の性器は使わないと退行萎縮してしまい、再開しても性交痛が伴ない、悦びを感じなくなってしまう。 愛があるセックスでさえ、苦痛になるのだ。

まもなく僕は60代に突入する。きっと今より性的な人間になっていくのだろう。
櫻井氏の話によると、60代の男と50代の女が最強の性的カップルになるそうだ。60代に50代の彼女がいると楽しいだろうな。

食わなければ死ぬ。排泄しなければ死ぬ。眠らなければ死ぬ。でもセックスしなくても生きていける。セックスは面倒でもあるが、僕は生涯、性的人間であり続けたい。衰え、枯れていく自分を嘆くことなく、むしろ老化を楽しみながら、なおもまた性的に生きていきたい。

若い人からみると、老人たちのセックスは不潔に思えるかもしれないが、僕にとっては自分自身の今後の大きなテーマになっている。
老後の性生活を考えていくと、男も女も、夫婦関係や罪の意識から解放されたフリーセックス観が必要になると思う。