わかった!という幻想 | 牧童の溜息

わかった!という幻想


「メル友の絵文字も増えて開けし梅雨」牧童

聞かれる前に解説しちゃおう。

まずメル友がわからなければ、俳句の意味もわからない。
メル友はわかっていても、どうとらえるのか感覚がそれぞれ違う。

「メル友」であるのだから家族・親戚・友人・恋人などの関係でのメールではないだろう。
「メル友」はまだ会ったことがない、でも波長が合っている関係。
それが友達レベルなのか恋人か愛人レベルなのかは読み手の解釈の自由だ。

次に「絵文字も増えて」だが、これも絵文字がわからない人にはわからない。

文字では表現しきれない感情を絵文字に託す。
絵文字が増えているということはなんらかの感情が高まっているのだろう。
では、どんな絵文字なのかを推測していく。
そのヒントは次の語句だ。

「開けし梅雨」から考えていく。

これが「秋の暮」とか「冬木立」だとまたイメージが違っていく。

梅雨が開けたのだから、明るさを感じる。まさかドクロやウンチの絵文字ではないだろう。

心病む彼女からメールが来た。
まだ会ったことはないがメールでいろいろ話し合ってきた。
心が通い、秋には僕に会うために上京する。そんな彼女から来た今日のメール。絵文字などあまり使ったことがない彼女なのに…
            
絵文字が並んでいた。
僕の心の梅雨が開けた。
と言う俳句だ。

でも梅雨が開けると明るい?

通常、この共同幻想で他人の俳句を解釈してしまうのだ。

でも…
ドクロの絵文字だってありえる。

     

やんなっちゃいます!
梅雨が開けちゃいました。
私、太陽が大嫌い!怖いです!肌がうけつけないのよ!闇から引きずり出さないで!

そんなメールだってある。

私たちの自己表現は俳句よりも短い信号で相手に送られていく。

相手は自分の感覚の思い込みで相手を掌握する。

わからないやつに、いくら自分の心をわかってもらいたくなって説明しても無駄なんだよ。
説明、弁明しなければわかってもらえないような自分は駄作なんだとあきらめたほうがいい。