私が小学3年生の時。
その人は小学生でも中学生でもない、ジーンズの似合う脚の長い立派な大人。
ちょっとだけ長い髪を風になびかせながら、大股で歩いてた。
赤いランドセルを背負った私と、道の反対側を同じ方向へと。
この辺りの人なのかな・・・。私は、横目でチラリチラリ見てたと思う。ちょっとドキドキしながら。
私が住んでいる社宅アパートの近く、公衆電話のある角を曲がって姿が見えなくなった。
それからというもの、小学校から自宅までの帰り道が楽しみ。あの人がいるかな?あぁ、いた!やっぱりかっこいい!
あぁ、なんて可愛らしいんでしょう(笑)
ある夜、ピンポーンと鳴る音。だれか来た。
母は台所で夕飯の支度中、父は何していたのかな・・・とにかく、私が出たのだ。
「はーい!」とドアを開けたら、その人が私の目の前に立っていたのでびっくり。
心臓の鼓動がこれでもかと言う程、大きく鳴りだして眩暈がした。
「Yと言います。お父さんいますか?」と低い声で私の目を見た。
ドキドキドキドキ・・・・・・・・・・
「はい、います。」そう言い放って、私は急いで部屋に戻った。
だって、お風呂上りで下着姿だったんですもの。それは、それは、恥ずかしくて。
今思うと、小学3年生でもしっかりとした羞恥心が芽生えていたんだなぁ。
恥ずかしくて逃げ出したのか、好きな人が目の前に突然現れたからか・・・
どちらもでしょうね。たぶん。
Yさんは、父と同じ会社の人だった。
「あいつはいい奴だよ。」と父がYさんを称賛していたので、なんだか私が嬉しくなっちゃったっけ。
好きな人が『いい奴だよ』と言われるのは、嬉しいでしょ。
それからして間もなくのこと、父が母に話しているのを聞いた。
「Yが結婚するんだって。相手はWさん宅の長女さんらしいよ。」
なんと、私のお友達のお姉さんがYさんのフィアンセ。歳の離れたお姉さん、エキゾチックな顔立ちをした大人の女性。
ランドセルを背負っている私なんか見向きもされないはずなんだけれど、とってもショック。
これが初恋で、最初の失恋。
いつの日か「あなたが、私の初恋の人だったんです!」って言いたかったんだけどな。
父に、Yさんが私の初恋の人だと思い切って話してみたところ「へ~、マセガキだったなあ。」って、笑われた。
そして、「あいつは、いい奴だったよ。」と。
『いい奴だった』人を好きになれて、良かったよ。
・・・・・私の初恋のおはなし、おしまい


