仕事柄、扱うのは殆どが絹の生地です。

狭いながらも少し蘊蓄を垂れてみたいと思います。

但し、私の思い込みもあるかも知れませんので、その点はよろしく。

 

絹は一時は日本の屋台骨を背負う一大産業でした。

品質の高さが世界に認められていたのです。

それは安価で摩擦に強いナイロンができる迄でした。

 

化繊の糸は一本の長さが言わば無限、それに引き換え自然界が生んだ糸は綿やウールで数センチから長くて十数センチ。

麻ならもう少し長いと思います。

それに引き換え、絹糸は一本の長さが1キロから1.3キロあります。

自然界から生まれた糸はそれを撚り合わせる事で衣類に使える糸にしているのです。

一本が短ければ糸の表面はささくれ立っているのが普通。

なので滑りが悪いのですが、絹は1キロの長さがあるので絹独特の肌触りが生まれました。

 

絹の良さはその生まれに寄ります。

命を守る為にだけ生み出した糸、その保温性、吸湿性や排湿生は他の糸をはるかに凌駕しています。

絹で一番の欠点が摩擦に弱い事、乾燥時はそれほどではないのですが、湿気を帯びた時は可成り損傷を受け易くなります。

その点は麻や綿に負ける所です。

 

もう一つの欠点は生産に神経と多大な手間が掛かる事。

お蚕さんとかお蚕様と呼ぶ程親身な世話が必要でした。

日本で輸出のトップだったのは安価な労働力があったからとも言えるのです。

その日本より遥かに安価な労働力のある中国からの輸入が解禁されたとたん、日本の絹生産はほぼ終了しました。

 

ところが中国の労働単価が急激に上がれば絹糸の価格も連動して上がります。

それでも、その労働の価値としての絹の価格はまだまだその対価としては安価過ぎます。

 

化繊であるシルックと価格に大差がないなんて有り得ない事。

絹に付いてはまだまだお知らせしたい事がありますが、暴投している絹の白生地がまだまだ本来の価格からすると安価だという事を知っておいて欲しいと思います。