我が工房には今時考えられない手の込んだ小紋の注文が続いています。
手描きの小紋の場合小さな柄を飛ばすだけが通例です。

実際、最初の注文主も別注を依頼したものの型染めである事を信じていたそうです。
本来型染めでしか出来ない大量の柄を手描友禅でしたものですから、大層驚かれた様です。
我が工房でもやった事の無い「重さ」の手描友禅小紋が続きました。

今回ご覧頂くのはその中での最新作、単衣の御所解柄。
仕上げの金加工ならぬ、銀糸目の筒描き現場です。
染屋の独り言Ⅱ-銀の筒描き
着物の柄を見て頂くと分かる様に見えている範囲で同じ柄はありません。
一般に手描きと言えど小紋の柄の送りは2尺つまり75センチ程度が基本です。
この小紋はなんと2m前後あります。
単衣用なので柄は夏を思わせる撫子やポピーなど。
地色は綺麗な藤色、写真ではグレーっぽい空色に見えますが。

この着物一ヶ月程前に糊伏せの写真をお見せしたものと同じ、工程が良く分かります。

この様な重い手描友禅の注文が続くのは世間に無いからだろうと思いますが、職人が直接注文を受けるので我が儘がちゃんと聞いてもらえる事、それに価格も影響しているのだと思います。

工房の作品には彩色だけで一ヶ月掛けた友禅の小紋や細い線上げで一面に詰めたローケツの更紗など凝ったものが多くあります。
本当は他に出来ないそんなものにも興味を持って頂ければと思っています。