これからの日本の畜産業界に本格上陸するだろう2大黒船が脱抗生剤の流れと、アニマルウェルフェアだ。抗生剤の過剰使用は、それを食した人間に抗生剤が効きにくくなる可能性が指摘されている。いわゆる多剤耐性菌の問題で、過剰に投与された抗生剤によって、耐性菌ができるというものである。家畜が病気になれば抗生剤を使用せざるを得ないが、問題は、病気でなくとも抗生剤を投与している点にある。予防的に抗生剤を投与することで、成長促進剤的な使用をしている。残念ながら、日本はこの点で先進国とはいいがたく、コリスチンなど一部を除き、抗生剤の予防的投与がほとんどフリーという現状である。

 

もう一つの流れは、アニマルウェルフェアである。人間の都合でせまい畜舎に閉じ込め、動物の福祉を考慮しない生育環境で育てることに対し、特にヨーロッパでは制限が厳しい。効率良く太らせて早く肉にするためには、管理する人間の移動が少なく済むように、狭い畜舎で生育させるのが一番だが、これは動物の人権?動物権?をほとんど考慮していない。漫画喫茶の狭いスペースや、カプセルホテルで一生過ごすことを考えれば、その過酷さは容易に想像できる。この点でもいずれ改善を迫られるだろう。

 

良質なたんぱく源である肉を安く手に入れられるのはいいことだが、その生産プロセスを考えざるを得ない時代が来るだろう。