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「洪武大案」(2011年 監督/曹慧生 主演/李立群)
全35話

※日本語版はまだありません。

洪武というのは明の初代皇帝・朱元璋が国を治めてた頃の元号。案は事件、事案、案件の意味。

――元朝を倒し明朝を建てた朱元璋。貧しい農民出身の彼は汚職官吏こそが世を乱す元凶であると考え、朝臣の前で今後一切の汚職は有無を言わさず一律に死刑に処すと宣言。また官吏の派手な暮らしは農民の不満を惹き起こすとして厳に慎むよう命じた。
ところがある日朱元璋がお忍びで街へ視察に出掛けた所、高官らが妓女を乗せた"花船"で飲み食いして遊んでいるという噂を耳にする。市民らはその高い身分の官吏を恐れ通報も諦め、ただ不満ばかりを溜め込んでいる様子だ。朱元璋はわずかな供だけを連れ、大商人のふりをして花船に乗り込む…――

歴史ものではなく、楊馬林という作家の小説「朱元璋懲貪」(貪は貪官(汚職官吏)の意)を基にしたフィクション。勧善懲悪サスペンス。貧民出身ゆえに利を貪る汚職官吏を何よりも嫌悪する朱元璋が、新時代にも狡猾にのさばる悪徳代官を罰していくという物語。小説の原題を用いなかったのにはちゃんと理由があって、最初は朱元璋を主人公にして物語が始まるけど、事件ごとに中心人物がバトンタッチしていくので、朱元璋だけに注目するわけではない"洪武時代の事件"という風なタイトルをつけたのだろう。
ひとつの事件は数話と短いものから8話くらいある長いものまで様々。しかし汚職の手法がもう本当に凄まじくて…こんなに次々とあの手この手と狡猾で周到な手口で追い込まれたらどんなに清廉潔白な人でも嵌められるっていうか…結局は正義とか真実とは無関係のものが人の心を操作してるというか…政治の世界、社会の仕組みってオソロシイってこと!!悪人は悪人らしく描かれててわかりやすいけど、その悪が世の中でまかり通ってしまう過程をも描いててリアルで末恐ろしい。
これもまた先が気になって仕方ないというものではなく一話一話じっくり見て行くタイプの作品。ミステリのHow done itのように、悪は初めから分かっているけどそれをどうやって追及していくかが物語の見どころ。証拠をつかむって難しい。そして悪人は決まって賢い。その賢さを他に使えんのか(´Д`;)

朱元璋役のリー・リーチュン(李立群)さんが本当に良い味出してて、皮肉たっぷりに責める喋り方とか特徴的。この人怒ってる役が似合うのよw 実際は朱元璋がこんなデキた人間じゃなかろうとは思うけど、トップならではの苦悩も滲ませた貫録のお芝居。
完全無欠の美女ヤン・ミー(楊冪)もゲスト的に出演。本当にちょびっとしか出てこなかったけど存在感は凄い。他の女優さんも中の上くらいの美人ばかり。
とはいえ陰謀ものらしく、もっぱら活躍するのは中年男性のベテラン勢ら。ゲスト出演のジェフ・バオ(保剣鋒)、フー・ダーロン(富大龍)といったハンサムの他は、見た目はそんなパッとしないけどその芝居にうならされる名優ばかり。特に、信念を貫く真っ直ぐすぎな知事・道同を演じてたリウ・ダーカイ(劉徳凱)さんが素晴らしかった!あと悪役だけど馮知遠を演じてたツァオ・コーナン(曹克難)さんが、役回りは古典的なずる賢い商人だけど妙に味わい深いキャラになっててなぁんか好き。

物語は大団円が待っているというものでもなくとりあえず終了という形で、まだ続編も出て来そうな雰囲気もあり。サスペンス、ミステリの連作好きにオススメです!


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広告さえ見れば無料。簡体字字幕。


(2016.12.8追記)
主な登場人物

 朱元璋
明初代皇帝。貧しい牛飼いから皇帝に上りつめる。過去に出家し物乞い同然の生活をしていたことから僧、坊主と呼ばれると怒る。幼名は重八。

 韓宜可
民間の書生だったが街に視察に来ていた皇帝にその洞察力を買われ監察御史に取り立てられる。皇帝の手足となって官吏の不正を暴き出していく。

 朱標
皇太子。皇帝自ら帝王学を教えるため常に傍に置いている。歳の近い韓宜可とも仲が良いようだ。だがこれからという時に急逝したため終盤は出てこない。(彼の息子の朱允炆が後を継ぐ。)

[第1集~第5集]
 鄭士元
工部の不正を告発し皇帝に監察御史に取り立てられる。法と規律を厳格に執行することを重んじる男。

 朱桓
朱元璋の甥(実兄の息子)。その地位をカサに着てやりたい放題。

[第5集~第13集]
 秦升
若くして欽差大臣に任命された男。父の秦良はかつて朱元璋と共に革命を戦った同志。

 蔡玄
蘇州の知府。なかなか皇帝の目の行き届かない地方都市においてせっせと私腹を肥やしている。

[第13集~第20集]
 開済
刑部尚書。部下が収賄し囚人を逃がしていた事を知り、監督責任を問われる事を恐れ事件をもみ消そうと図る。

[第20集~第26集]
 道同
広東の知県。その温和で誠実な性格から住民に広く慕われている。

 朱亮祖
広東一帯を守る将軍。その統率力には皇帝も信頼を置いており南征も果たす。知県ですら彼には逆らえない。

[第26集~第35集]
 欧陽倫
科挙を首席で通り、皇帝の娘・安慶公主に見初められ婿入りする。だがその夫婦生活は、嫉妬深い公主に全てを束縛される不自由なものであった。

 馮知遠
大商人。実は裏で政府が禁じている茶や馬の売買を行っている。

阪急うめだ本店で開催されてる「光のヒンメリと北欧クリスマスマーケット2016」へ行ってきました。

去年とはまた少し違う巨大なヒンメリ(オーナメント)。

00分になると光のショーが始まります。


そして今年も屋台のように北欧グッズのお店が立ち並ぶ。
この一番上の棚のサンタさんの置物がすっごくかわいかった(゚∀゚*)



雑貨、衣服、食器、アクセサリー、そしてクッキーなどの軽食と飲み物。(価格はもちろん"百貨店な"お値段ですが…(^∇^;))
祝祭広場の大階段に座って楽しんでる人も沢山いました。
クリスマス気分が盛り上がる!


光のヒンメリと北欧クリスマスマーケット2016
11/23(水)~12/25日(日) 阪急うめだ本店9階・祝祭広場
光のヒンメリのショーは毎正時(00分)に開催。
名古屋ヤマザキマザック美術館の企画展「森のDNA」を見てきました。
植物や自然がテーマなのかな、名古屋の新進気鋭のアーティスト達の作品が集められてるようですが…。


いかにもなメルヘンでファンタジーな作品から始まったので、あーハイハイって軽く眺めてたら、綺麗なグリーンの細長い容器に蛙が乗ってるガラス細工(「緑色の善良な小市民」)が面白く、また似た系統の色遣いのガラス容器が並んでいて、この一群の作品は好きだなあと思ったらエミール・ガレだったという…(^-^;) そうかガレか、こんな近くで見たのは初めてだけど、色合いといいなめらかな曲線を描くスマートな形状といい、やはり有名作家の作品ていうのは何かしら引き付けるものがあるんだなぁ。
この企画展は森がテーマというより、美術館が所蔵するアールヌーヴォー作品と新人作家のコラボレーションを狙ったものみたい。ガレの器の他には凝りに凝った装飾のお高そうな家具やシャンデリアが小部屋を模したいくつもの空間に展示されてました。
このコラボの出来に関してはなんともかんともだったけど、2人の作家さんの作品がとても印象的でした。

1人目は切り絵作家の鈴木春香さんの作品。細かい三角形が集まりその大きさによって濃淡が浮かび上がるという一枚の絵としてもきれいに完成してるのだけど、それを何重にも重ねてあって表面の三角形の格子からその奥その奥の模様が覗き、また上の格子の影がその奥に新たな模様を生み出していて、とても趣深い作品になってて素敵でした。光源をゆっくり動かすことができればもっといろんな表情が見えてきて面白いだろうなぁ!

2人目はこの企画のメインアーティストなのかな、今尾泰三さんの作品群。立体造形(ミックスメディア)主体。本物の植物(たぶんそこらへんに生えてる雑草)を用いた「Mid Dream Man(ミドリーマン)」という作品は、恐竜のような、あるいは巨人のような形で緑の草で完全に覆われた得体のしれない生き物で、ブキミさとどこかクスッと笑えるファニーさを併せ持ってて惹かれたし、木やロープなどを布テープで固定してつくられた大きな鬼のような仮面がアースカラーで塗りたくられた「森とDNA」には、自然の力強さがぐいぐいと顔を出してる。
他の作家さんがみんなメルヘンで小綺麗な森をイメージした作品ばかりだった中で彼の作品は自然の美しさのなかにも"野生味"、恐ろしさを垣間見せるようなものになってたのがとても好きでした。


森のDNA 芸術は森からはじまる
11/18(金)-2/26(日) ヤマザキマザック美術館
(※年末年始は休館)

ヤマザキマザック美術館
名古屋市営地下鉄新栄町駅直結。入口は1階ですが展示室は4階5階。
「(西遊記之)孫悟空三打白骨精」(2016年 監督/鄭保瑞 主演/郭富城、鞏俐、馮紹峰)
120分

※日本語版ありません。

タイトルは「孫悟空、白骨妖姫と三度戦う」という意味。

――唐の僧侶・玄奘は国を救うという経典を求めて西方へ旅に出る。道中で、かつて世界を荒らしまわった妖猿・孫悟空や、豚の妖怪・猪八戒、その道弟の沙悟浄に出会い、共に西へと向かう。
人間の生気を喰らう妖怪・白骨夫人(白骨姫)は、徳を積んだ僧侶を喰って永遠の力を手に入れるため、手下たちに玄奘を捕えるよう命令する。――

[ここからネタバレ------
深い森の中で一件の小屋を見つけた玄奘ら一行。小屋には一人の老婆と二人の若い娘が暮らしていた。猪八戒は美しい娘たち追って出て行く。沙悟浄もそれを追いかけて行ってしまった。孫悟空は辺り一帯を漂う妖気から老婆を警戒するが、玄奘は親身になって老婆の話を聞く。白骨夫人扮した老婆の術中にはまって襲われた玄奘だが孫悟空が間一髪で救い出し、白骨夫人らは撤退していった。

玄奘らは辿りついたある国で、幼い子供が白骨夫人に次々とさらわれ行方不明になっていると知る。国王は玄奘に国を救ってほしいと頼む。その時、黒い煙のような姿の白骨夫人が現れ玄奘に襲い掛かる。孫悟空らが応戦するが、その隙に玄奘は何者かに攫われてしまった。
玄奘を攫ったのは他でもない国王だった。国王は自分の左手にかけられた腐敗の呪いを解くために子供たちをさらってその生き血を飲んでいたのだ!国王は高僧の生き血を飲めば呪いが完全に解かれると玄奘を殺そうとするが、またもや孫悟空が間一髪で救出し、捕われていた子供たちをも解放した。
街へ戻ると子供たちの親が集まって玄奘に感謝の意を述べる。だがその一人を孫悟空は叩き殺し、その子供をも手にかけた。孫悟空は彼女らが妖怪だと見抜いていたのだが、それがわからない玄奘は怒って孫悟空を破門にする。孫悟空は釈然としないままにその場を離れて行った…。
その直後、白骨夫人が現れあっという間に玄奘をさらって飛び去って行った。沙悟浄は後を追い、猪八戒は孫悟空に助けを求めるべく彼の故郷である花果山へ向かう。

花果山へ戻ろうとする孫悟空の目の前に菩薩が現れる。菩薩は何があっても人を信じる心が必要だと、孫悟空に玄奘の元へ戻るよう諭す。
白骨城へやってきた沙悟浄を無数の骸骨兵が取り囲む。そこへ花果山へ行ったものの孫悟空には会えず彼の鎧だけ持ち帰って来た猪八戒が合流し、必死に骸骨兵と戦う。その頃、城では白骨夫人がいよいよ玄奘を手にかけようとしていた。白骨夫人は自分の前世は人間であったが、人々から魔女だと罵られた不幸な人生で、恨みを晴らすため妖怪に生まれ変わったのだと告白する。恨みに生きる彼女を不憫に思った玄奘は彼女のために死を覚悟する。そこへ孫悟空がかけつけた。猪八戒の持ち出した鎧を身に着けた孫悟空は正体を現し巨大なゾンビと化した白骨夫人と渡り合い、激闘の末倒した。そこへ菩薩が現れ白骨夫人の魂を導こうとしたが、白骨夫人は生まれ変わりできないよう自ら魂を消滅させた。白骨夫人の末路を悲しむ玄奘は孫悟空に自分を殺してくれと頼む。孫悟空が如意棒で玄奘を打ち付けると玄奘の体は石と化した。魂だけが抜け、いずれまたこの体に戻って来るのだという。
孫悟空らは石となった玄奘を背負い、彼の意志を引き継いで西への旅を続けるのだった…。(終)
-----ここまで]

実写とCGをミックスした、ゲームみたいな映画。
CGによる妖怪や、白骨妖姫の美しさをじっくりと見せることに重点を置いた作り方なので一つ一つのシーンが冗長で、子供は多分1時間もしないうちに飽きて寝ちゃう!物語はけっこう素直に西遊記してるので小中学生くらいの子供向けなんだけど、演出が20歳周辺の男性向けっていうのか…なんかちぐはぐな印象。この緻密なCGによるど派手アクションはゾンビと戦う某アクションゲームにしか見えない。
男性向けなのはアクションメインてのもあるけど、女優さんを非常に妖艶に演出してて、露出はそんなにないけど(一応入浴シーンあるよ☆)視線が逐一耽美でエロい。CG駆使してるとはいえアラフィフのコン・リー(鞏俐)が熟女の魅力ではなく普通に若い娘のような美しさ!どんだけ修正したんだ!(;´Д`)ノ
主役格の玄奘役にモデル系イケメンのウィリアム・フォン(馮紹峰)を持ってきて、あと付け足しのように恋愛要素も無理くりねじこんでて女性へのアピールも頑張ってる。でーもー、ぶっちゃけつまらんかった。orz

衣装は孫悟空らは一応京劇っぽいテイストの着てるけど、舞台がトルコあたりをモデルにしてるので背景も衣装もあんまり中国っぽさはなく、むしろグリム童話の実写版って感じが…。とても西洋風。

うーん…とにかく見た目を楽しむ映画なのでウィリアム・フォンが好きな人は見るとよいです。原作ほどおバカな役ではありませぬ。あとは西洋ファンタジー系ゲームに出て来るお姫様とか好きな男性はどうぞ。コン・リーまじで美しい、若い。女は化けるね!(リアルな意味で!)

YOUKU
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久しぶりに台詞解読です。
「天命の子」ダイジェスト版(全41話)第41話16分頃から。
このドラマ最大のカタルシスを描く最も好きなシーンを訳してみました。
当然ながら思いっきしネタバレです!!
物語を楽しむ気のある人は絶対に先に見ないで!!

ドラマには興味なく単に中国語の台詞を読んで勉強してみたい
・ドラマを既に観終わってて原語でどう言ってるのか知りたい
・ミステリは先にトリックのネタばらしを見てからじっくり読む方だ

このどれかに該当する方のみご覧ください。
…なお、まだ日本語版観てないのでざっくり意訳です。間違いもあるかもしれません。

天命の子~趙氏孤児 DVD-BOX1/王雨

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こちらは完全版全45話。

*  *  *  *  *

「程先生、貴方には参ったな(*1)。」
「わたくしは屠岸様の事をよくわかってますから。あなたが到満先生の車に乗って行くわけがない、ということは到満先生は(追っ手を)おびき寄せるおとりに過ぎないのでしょう。」
「韓厥殿は私の(到満の車)を放ってはおくまい…。今、おそらく彼ら(韓厥)は彼(到満)に追いつく頃か。」
「到満先生は西門から出て秦国へ行くよう見せかけ、屠岸様は南門から出て鄭国へ行くよう見せかけた。」
「すべて貴方の想定内だというのか。」
「そして実はあなた自身もおとりであると。屠岸様が捕えられてもご子息様は無事逃げられるとお考えでしょう。公子は今頃は東門から出て宋国へ向かっているのでしょう、宋国からまた戎狄へと行けますから。」
「……貴方が国君(国王)でなくて良かった。でなければ、我が息子屠岸無姜は終わってたな。」
「屠岸様の計画通りだと、無姜公子はどの国にもたどり着けないどころか、死からは逃れられられないでしょう。」
「…何だと?」
「屠岸様はご存じないでしょうが、国君は既に、無姜様を匿う者(国)があれば晋国は必ず戦う、無姜様と戦い(負かして晋国へ)送り返した者(国)には三つの城池(※土地の事)を贈る、と列国に通知しておるのですよ。」

*1 直訳:あなたは人を敬服させないわけにはいかない。



「…わしはようやく分かってきた、国君は彼(無姜)を絶対に逃さないつもりか。だがここまで来た(*2)。わしはもう充分だ(*3)
貴方がここで私を待っていたのは、この事を私に伝えたかったからなのか?いやいやいや、お前は私を殺しに来たのだろう。」
「わたくしは無姜様を救うために来たのです。」
「……何?貴方が無姜を救う?」
「この程嬰は大業を教え(育て)て19年、そしてまた無姜様をも教えて19年。わたくしには子がおりません。大業も無姜様も、みなこの程嬰の子(同然)です。」
「先生がここに立ってることが、どうして息子を救うのだ?」
「もし無姜様を助けたいのなら、屠岸様はわたくしの言う通りにして下さい、無姜公子のためにしてもらうことがあります。」
「程嬰…お前とわたしは19年ものつきあいだ(*4)、お前は(私の事を)よくわかっているだろう。(すべての)事態は成功しなければならない、敗けはない。敗けはすなわち死だ。
だがわしは今…今我が息子無姜のためにここで一時の生をむさぼっている(*5)
言え。我が無姜のためならお前の言う事をなんでも聞こう。」
「では屠岸様お戻りください。城へ戻り裁きを受け死ぬのです。
その理由は一に、韓厥様の恨みを晴らすため。二に、国君の憂いを晴らすため。三に、民衆百姓らの血債(*6)を返すため。屠岸様、これらのあなたを恨んでいる敵は、しかし、無姜様を恨んでいるのではないのです。」

*2 直訳:事態はこの一歩まで辿りついた。→計画通りここまで来れた
*3 直訳:わたくしは、心から幸運だったと思う。
*4 「打~交道」なので親しいというより戦って来たというニュアンスか?
*5 計画に失敗したので死ぬしかないのだが、我が子のためにみっともなくも生きることにしがみついている。
*6 血の債務→子供を殺された恨み



「…そうか。もちろん貴方の言う事を、わしは受け入れよう。」
「無姜公子が宋国へ行く際には必ず秋水(※河川名)を渡ります。そこで一隊のキャラバンが無姜公子を待っています。」
「ただのキャラバンがどうして我が無姜を救えるというのだ?」
「そのキャラバンの隊長は名韜なのです。」
「…貴方が言うのは、もしや秦国の名将・名韜か?」
「そうです。わたくしは名韜様の命を救ったことがあるので、名韜様もわたくしのお願いに応えてくださいました。」

「そうなのか…貴方はもうすでに良いように計らっていたのか。
ならばよい。このわしはこの一生において、国君を除いて他には、何人たりとも拝礼を捧げた事はない。程嬰、この屠岸賈の礼を受けてくれ。」
「屠岸様、わたくしがここへ来たのはあなたのためではありません、あなたの礼は受けられません。」
「貴方のその瓢箪の中身は酒かね。」
「酒、ですな。」
「素晴らしい、わしはこんなところで貴方と酌み交わせるとは思わなかった。ではわしにこれまでの先生への罪を詫びさせてくれ。」
「この酒は雪片酒といって、大変にめずらしい毒です。屠岸様は飲めません。」



「貴方は本当は我が身から首が離れることが嫌なのではないのか?(*7) ではその酒をお前は誰にやるのだ?それは天が定めた、わしに与えられるものだろう。」
「この酒は、わたくしは屠岸様には渡しません。」
「程先生、お前と私は19年も関わりあってきた。(なのに)わしに尊厳をもって死なせてくれないのか?」
「…19年。この19年、わたくしは屠岸様の屋敷で暮らし、毎日眠る前、毎日目覚めた後、目の前に、ある情景が浮かび上がります。屠岸様覚えてるでしょう、19年前のあの晩…楼台の下、刀槍が林立し…あの城が一杯になるほど沢山の嬰児が、首を並べられ沙汰を待ち…楼台の上で、あなたはわたしに迫った、わたしの骨肉を引き裂けと(*8)…。息を吸うと、我が子の体の香りがして、垂れているこうべからひと目見上げれば(*9)、そこには我が子の笑顔が…。屠岸様、あの晩、あなたはこの程嬰親子の尊厳を考えましたか?あの晩、あなたが命令を下して殺していった子供の尊厳を考えられましたか?あの晩の後、(殺された)子供らの父母が次々と川に身を投げ梁に首を吊り…屠岸様、彼らに尊厳はありましたか…。
屠岸様、わたしは本当の事を言いますからお聞きなさい。この19年、わたしは一時たりともあんたの友ではない。
…言ってやる、おまえは人殺しの犯罪者だ!!!(*10)
おれはおまえと同じ道を生きねェし死ぬときは絶対おまえとは同じ時には死なねェッ!!!(*11)
この毒酒はなぁ、このおれの尊厳だ!おめェの尊厳じゃねェ!!!
おめェの尊厳?帰れ!!帰って裁きを受けるのがおめェの尊厳だッ!!!」

*7 直訳:あなたが考えてるのは、本当はついに私の体と首が別々の場所へ行く(→処刑される)事が堪えられないのではないのか。→本当の所は処刑されるまで待ってられなくて今すぐ殺したいのだろう?だから毒酒を持って待っていたのだろう?の意。
*8 直訳:あなたは私と私自らが産んだ骨血(→実子)を引き離せと迫った。
*9 ここはよくわからない。平伏している程嬰が我が子をひと目見ようと視線だけを上げて見たという状況か。
*10 直訳:私はお前を人に危害を加えるずるいならず者だと罵ってやる。(害人、奸賊は非常に強い罵り言葉。)
*11 親しい人とは死ぬときも同時に死にたいと考える。三途の川を渡る時にも一緒の舟に乗れるから。これはその逆。これ以上は一時たりともお前と一緒にはいたくない、という意。


*  *  *  *  *

ラストシーンではないのでこの後にまだ二つ山場が残ってますが。