燃ゆる呉越 | あさひのブログ
「大秦帝国」「クイーンズ」のホアン・ジェンチョン(黄健中)監督作品。

「燃ゆる呉越」(2007年 原題「越王勾践」 監督/黄健中 主演/陳宝国)
全41話
燃ゆる呉越 DVD-BOX 1/CKエンタテインメント

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邦題シブいぜ…!
春秋時代の呉越の話、つまりは"臥薪嘗胆"のエピソード。大志のために今を耐え忍び切磋琢磨する…一般に呉王夫差と越王勾践がそれぞれ臥薪、嘗胆したと伝えられるこの話を、勾践を主人公にして描いていく。

――春秋時代。越国は宿敵・呉国に奇襲をかけるが裏をかかれ軍隊は全滅、主力を失った越国に呉国は先王を殺された復讐を掲げ5万の兵を率いて進攻してきた。迎え撃とうとする越王・勾践に宰相の文種や知将・范蠡は退避を勧めるが聞き入れられず、越軍は大敗し都は陥落した。なんとか山塞へ落ち延びた勾践らをあざ笑うかのように呉軍が迫り越国の民を惨殺していく…ついに勾践は苦汁の決断、屈辱的な呉への投降を迫られる――

これや、こういうのや私がこの監督に求めていたのは!(°∀°)b
政治陰謀劇の決定版!有名な逸話でありながら現実に即した納得いく物語に仕上がっている。欧冶子や干将といった春秋時代の伝説の鍛冶師を登場させて「王者の剣」をめぐる物語を沿わせることで、良いものを造るためには長い忍耐と苦労が必要という"臥薪嘗胆"の意味合いを強めている。もちろん范蠡と西施の清らかな恋愛模様も描いていて、やっぱりくそ真面目なんだけど凄く面白い作品だった!

この監督の手がける作品は登場人物一人ひとりの設定が細かくて魅力的な、いや、人間らしいキャラクターになってると思う。脇役でも個性があって、ステレオタイプな善悪に偏ったキャラはいなくて皆自分の立場環境から自然とそう物を考えると納得できる人間として描かれてる。(それが「大風歌」では主役格がかすんでしまうという欠点にもなったが。)
この作品の主役・勾践は、「復讐の春秋」でチェン・ダオミン(陳道明)が演ったような高貴さではなく地方の豪族の頭らしい豪快でプライドが高く短気な人物として登場し、そのプライドをズタズタにされどん底に蹴落とされる。そこから這い上がるのが彼の徳やカリスマ性ではなくいち個人の努力という形で描かれていて、いわばスポ根のような汗と涙の物語に。演じるのはチェン・パオグォ(陳宝国)。序盤はああよくいる怒鳴るしか能のないダメ上司って感じなのが、だんだんと冷静に物事を見るようになってくる、静かな恐ろしさのようなものを感じさせる。瞳の中に戸惑いや怒りや優しさなどの表情がよく見て取れる人。
そして何といっても、伍子胥を演じるバオ・グォアン(鮑国安)さんがイイ!特徴的な喋り方をする人で、呉国を救って来たという強い自負と鋭い観察眼を持つ伍子胥というキャラクターを非常に強く印象付けてる。物語上では敵役だけどすごく魅力的。彼の言っている事が常に事実だというのもあるけど、憎めないしむしろ同情・共感する。でも勾践も頑張れって思うし視聴者としてはどっちも応援したい…(>_<)
そして伍子胥のライバル伯嚭がまた絶妙な立ち位置。伍子胥の敵だけど勾践の味方でもない、さらに自分の事だけ考えてる強欲な人物ってわけでもない。彼は富を得ようとしてるのではなくこの政治世界で生き残るために、必死で生きるための選択をしているだけのこと。この腹の内の陰謀合戦は非常にリアル!現代にも通じる水面下のドロドロとした政治の世界。

呉王夫差、范蠡、文種、西施らもとても人間らしく描かれていて、特に西施が純愛ヒロインらしいヒロインではなくけっこうワガママなキャラなのには苦笑。ぶりっこ美女に対するイラッとじゃなく、ヒロインならそこは素直に応じろよ!みたいなイラッとがあった。いやーでもこういう一筋縄ではいかないガンコな女だからこそ、夫差はなんとかして彼女の心をつかみたいと奮闘するわけで、これはこれで純愛だよなぁ。

この作品でも臥薪、嘗胆したのはいずれも勾践として描かれてて、なんでだろうと思って調べたら、「史記」には夫差が臥薪したという記述はないそうだ。夫差が臥薪し勾践が嘗胆したという"臥薪嘗胆"が揃ってるのは「十八史略」かららしい。


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2枚ずつしか借りられない。そしてひと月に4枚借りねば損…。




長いものに巻かれろ