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 ユーモアあふれる科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」で、今年の化学賞の対象となった、わさびの刺激臭を使って聴覚障害者に火災の発生を知らせる警報装置。この装置を開発、販売しているのが東京都江東区にあるベンチャー企業「シームス」だ。装置は発売から3年で200台弱しか売れていなかったが、受賞を機に海外からも問い合わせが寄せられるようになり、同社は「望外の喜び」としている。

 イグ・ノーベル賞を受賞したのは、シームスの漆畑直樹社長や、滋賀医科大の今井真講師ら7人。

 シームスは「香りで社会貢献を目指す」として平成12年に設立された。主力商品は、家庭やオフィス用の香り発生装置など。

 聴覚障害者が就寝中の火災で逃げ遅れて死亡するケースが多いと聞き、14年からにおいを使って人を起こす装置の開発に着手した。

 開発では、人を起こすのに最も適したにおいは何かを突き詰めた。試したのは、ペパーミントや柑(かん)橘(きつ)類などから、靴下や脇の下、ごみのにおいまで多種に及んだ。

 その結果、最も適したのがわさびだった。同社の杉本新也さんは「くさいにおいはすぐに慣れてしまい覚(かく)醒(せい)作用がないことが分かった」と説明する。

 その後、今井講師らがわさびガスを使っての臨床試験を実施。かぜで鼻づまりだった人以外は目が覚めることが確認された。

 商品化されたのは21年4月。だが、販売台数は伸び悩んでいた。

 そこに訪れたイグ・ノーベル賞受賞の報。9月中旬、いきなり漆畑社長に「コングラチュレーション」との電子メールが送られてきたのだそうだ。

 9月下旬に受賞が正式発表されると、その後、米国を始め台湾や中国、韓国から「製造販売したいのだが」との問い合わせが続々と寄せられているという。

 「世界中の人に装置を知ってもらう機会になった」とニンマリだ。

 シームスは現在、再生医療分野の研究に力を入れている。同社は「この研究で本物のノーベル賞を狙う」と意気軒高だ。


「この記事の著作権は産経新聞に帰属します。」


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