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【大震災を生きる】第3部(3)
■計画の合意形成には時間
被災した病院を再建すべきか。それとも医療資源や人材を集中させ、病院の機能分担を進めるか-。そんな選択を迫られている自治体がある。宮城県石巻市だ。
石巻市では、周辺地域の中核病院だった市立病院(206床)が津波の直撃を受けて壊滅。数年前に海岸から離れた高台に移転していた石巻赤十字病院(402床)が地域の基幹病院として、震災後の患者の対応に当たった。
市立病院は4月から、高台に仮設診療所を開設して診療を再開したものの、手術や入院には対応できない状態が続く。医師や看護師の流出も止まらない。市は市立病院を再建する方針だが、市内でボランティアに精を出す男性(36)は言う。
「石巻には赤十字病院があっからねぇ。俺ら若い市民は、別に市立病院の再建にこだわらなくていいと思ってるよ。税金だってかかるんだし…」
◆「僕らは続ける」
震災で、石巻市の医療体制は甚大な被害を受けた。その象徴的な例が雄勝(おがつ)地区(旧雄勝町)だ。平成17年に石巻市と合併したが、市中心部までは車で1時間近い。海に面した地域だけに、震災で甚大な津波被害に遭い、約4300人いた住民は6月時点で1千人を割った。市立雄勝病院(40床)も壊滅し、地域からは医師がいなくなった。
赤十字病院はこの間、医師、看護師、薬剤師らによる「救護チーム」を交代で派遣。住民の診療にあたった。東京の医師も応援に入り、週2回の診察を続けた。
市は、この地域に入院設備のない無床診療所をつくる方針を決め、県外から医師を招いた。当面の危機は去ったが、この医師が今後、長くこの地で医療を提供してくれるかどうかは分からない。
宮城県災害医療コーディネーターも務める石巻赤十字病院の石井正医師は「診療所が開くまで、僕らは歯を食いしばってでも(救護チームの派遣を)続けます。決して、穴は開けない」と覚悟を語る。だが、将来については「医局などのシステムに頼らずに医師を確保し続けるのは難しい。医者はあそこの病院に行けばスキルが上がる、などの目的がなければ集まりにくい。中核病院から診療所に定期的に医師を派遣するなどのシステム作りが必要ではないか」との見方を示す。
◆医師派遣システムを
その“中核病院”を担うのはどこなのか。それをめぐり、赤十字病院と再建を目指す市立病院の調整が難航している。
石巻市は当初、「別の場所で再建すると国の補助金が受けられない」として、市立病院を被災した元の場所に再建する構想だった。しかし、その後、場所を移しても補助金が認められる可能性が出てきたため、現在は移転も視野に再建を目指す。
一方、赤十字病院は地域医療の復興にあたっては「人口減少や医療需要の減少を踏まえ、過剰な復旧・復興としない」との立場。使用不能となった市立病院が担っていた機能は、赤十字病院が病床を増やし、新たな病棟をつくる計画だ。中核病院として地域の診療所に医師を派遣するシステム構築にも対応したい考えだ。
地域の将来を見据えた計画の合意形成には、まだ時間がかかりそうだ。(道丸摩耶)
【用語解説】災害医療コーディネーター
大規模災害が起きた際に、医療面の調整を行う。専門の訓練を受けた医師や看護師らからなるDMAT(災害医療派遣チーム)を受け入れる医療機関の調整や、傷病者の被災地外への搬送を調整するなどして、災害時の医療を効率的に進める。宮城県では平成22年6月、5人の医師がコーディネーターに委嘱された。
「この記事の著作権は産経新聞に帰属します。」
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| 宮城県石巻市(写真:産経新聞) |
■計画の合意形成には時間
被災した病院を再建すべきか。それとも医療資源や人材を集中させ、病院の機能分担を進めるか-。そんな選択を迫られている自治体がある。宮城県石巻市だ。
石巻市では、周辺地域の中核病院だった市立病院(206床)が津波の直撃を受けて壊滅。数年前に海岸から離れた高台に移転していた石巻赤十字病院(402床)が地域の基幹病院として、震災後の患者の対応に当たった。
市立病院は4月から、高台に仮設診療所を開設して診療を再開したものの、手術や入院には対応できない状態が続く。医師や看護師の流出も止まらない。市は市立病院を再建する方針だが、市内でボランティアに精を出す男性(36)は言う。
「石巻には赤十字病院があっからねぇ。俺ら若い市民は、別に市立病院の再建にこだわらなくていいと思ってるよ。税金だってかかるんだし…」
◆「僕らは続ける」
震災で、石巻市の医療体制は甚大な被害を受けた。その象徴的な例が雄勝(おがつ)地区(旧雄勝町)だ。平成17年に石巻市と合併したが、市中心部までは車で1時間近い。海に面した地域だけに、震災で甚大な津波被害に遭い、約4300人いた住民は6月時点で1千人を割った。市立雄勝病院(40床)も壊滅し、地域からは医師がいなくなった。
赤十字病院はこの間、医師、看護師、薬剤師らによる「救護チーム」を交代で派遣。住民の診療にあたった。東京の医師も応援に入り、週2回の診察を続けた。
市は、この地域に入院設備のない無床診療所をつくる方針を決め、県外から医師を招いた。当面の危機は去ったが、この医師が今後、長くこの地で医療を提供してくれるかどうかは分からない。
宮城県災害医療コーディネーターも務める石巻赤十字病院の石井正医師は「診療所が開くまで、僕らは歯を食いしばってでも(救護チームの派遣を)続けます。決して、穴は開けない」と覚悟を語る。だが、将来については「医局などのシステムに頼らずに医師を確保し続けるのは難しい。医者はあそこの病院に行けばスキルが上がる、などの目的がなければ集まりにくい。中核病院から診療所に定期的に医師を派遣するなどのシステム作りが必要ではないか」との見方を示す。
◆医師派遣システムを
その“中核病院”を担うのはどこなのか。それをめぐり、赤十字病院と再建を目指す市立病院の調整が難航している。
石巻市は当初、「別の場所で再建すると国の補助金が受けられない」として、市立病院を被災した元の場所に再建する構想だった。しかし、その後、場所を移しても補助金が認められる可能性が出てきたため、現在は移転も視野に再建を目指す。
一方、赤十字病院は地域医療の復興にあたっては「人口減少や医療需要の減少を踏まえ、過剰な復旧・復興としない」との立場。使用不能となった市立病院が担っていた機能は、赤十字病院が病床を増やし、新たな病棟をつくる計画だ。中核病院として地域の診療所に医師を派遣するシステム構築にも対応したい考えだ。
地域の将来を見据えた計画の合意形成には、まだ時間がかかりそうだ。(道丸摩耶)
【用語解説】災害医療コーディネーター
大規模災害が起きた際に、医療面の調整を行う。専門の訓練を受けた医師や看護師らからなるDMAT(災害医療派遣チーム)を受け入れる医療機関の調整や、傷病者の被災地外への搬送を調整するなどして、災害時の医療を効率的に進める。宮城県では平成22年6月、5人の医師がコーディネーターに委嘱された。
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