その日も、いつもと同じ朝だった。




早朝、まどろみの中にいた僕は、突然頭のなかに“声ではない声のようなもの”が響いた(現れた)のを感じた。




その“声”はだんだん強く大きくなり、ハッキリと、こう叫んだ。





「内なる龍!」





「内なる龍!!」


 



「内なる……龍ゥゥゥゥーーーー!!!」







うちなる……、りゅう……



まだ寝ぼけていた僕は、その言葉を聞きながらまたウトウトと眠りに入ろうとした。(僕は朝がめっぽう弱い)





しばらくすると、また声がした。




「水を飲め!!」




「水を飲めェーーーーー!!」





力強い、どちらかというと男性的な、声。




水を飲め、と言われて気付いた。

たしかに喉がカラカラに渇いていた。




しかし、、、眠い。




ごめんなさいね、僕、眠いんすよ……。




その声をむりやり無視するように、僕はなお眠りに向かった。





しばらく眠っていただろうか。



夢と現実のはざまのような感覚の中で、今度は、僕の胸のあたりにぐるぐると黒い小さな渦のようなものが渦巻いているようなヴィジョンがみえた。





そうして、、しばらくまた眠っていた。

(本当に寝起きが悪いやつである)





そのうち、横で眠っていたパートナーが起きたかと思うと、ベッドのすぐ近くのこたつに滑り込み、そこでまた眠りにおちていった。



狭いベッドでふたり、ぎゅうぎゅうと眠るのが僕らの日常で、途中で起きたほうがこたつに移動することはよくあることだった。




そのタイミングで、僕は一度はっきりと目を開けた。




すると、また、あの声がした。




「水を飲め!!渇いてカラカラだ!」




僕は眠たげなパートナーに少し声をかけながら、脳内?の中に響くその声の指示通り、起き上がって水を飲んだ。




パートナーはすやすや眠っている。




よし、水、飲んだぞ。

おぼろげな頭で声の主に、頭の中で返した。




「トイレに行け!」




え、なにその指示。



まあいいか、行っておこう……。




トイレに入りながら、僕はぼんやりと考え始めた。



なんだこいつ

うちなる、龍、とか、言ってたけど……?




「そう、内なる龍だ!!」





わぁ!びっくりした。

なんだよお前、トイレまでついてくるのか?!

それはちょっとアレだぞ、プライバシーの侵害だぞ…?!




「安心しろ、オレは、オレが見たいものしか見ない!(`・∀・´) 





お、おお……、そうなんだ



安心して(?)僕はトイレで用を足し、また眠りにつこうとした。




「もう一度、水を飲め!!」



はいはい。


なんだかなぁ、と思いつつ、コップに残った水を飲み干して、ベッドに入った。



二度寝する気満々の僕だったが、このときこの瞬間から、僕と内なる龍”との、賑やかで摩訶不思議な時間が始まったのだった。