
しばらくみていたら
卵の上の方に線が入って
その部分がゆっくり静かにめくれてきた
何が出てくるんだろう
だけど
鳴き声はきこえない
びくっとして わたしは自分の耳をぎゅっと手でふさいだ
風も吹かず
誰の足音もせず
自分の声もきこえなかった
音がきえると
人は耳をふさぐらしい
耳の中に 大きな空気のかたまりが入ってきたような感覚だ
まるで
周りの音すべてがあの殻の中に吸い込まれていっているようだった
わたしは急に怖くなって、
一目散に走って家へ帰った
次の日、どきどきしながらあの場所へいってみた
だけどもう
そこに卵はなかった
心なしか 卵のあった地面が少しへこんでいるような気がした