1つ前の記事で書いた、
『ああいう出来事』の詳細を、
この記事を含め、2回に分けて書きました。
以下が、その抜粋した内容です。
-『仮面ライダー響鬼』という作品について-
【特徴】
平成仮面ライダーシリーズの第6作目にして『完全新生』をコンセプトとした作品。
伝統的な“和”(『スーパーヒーロータイム』にて同時期放映の『魔法戦隊マジレンジャー』では西洋の妖怪を基にした怪物が登場するのに対し、本作の魔化魍は日本の妖怪を基にしている点も興味深い)をベースとした世界観で、“鬼”(公式HPでは音撃戦士)とされる『仮面ライダー』達(作中では「仮面ライダー」とは呼ばれない)は修行によって自らの肉体を変容させる能力を得た人間であり、『楽器』をモチーフとする武器を駆使して戦う。
平成仮面ライダーシリーズでは多くで採用されている機械的なアイテムを用いて変身する装着型ではなく、鍛え上げた体を変質させ『鬼』に変身するという、『異形』の面(『血狂魔党』や『魔化魍ヒトツミ』、『鬼の鎧』のデザインなどからも、東映が製作した『変身忍者 嵐』などからインスピレーションを得ていることもうかがえる)を強調している。
更にキックが必殺技ではない、ベルトが基点の変身ではない、複眼のない目無し(紅以降はゴーグルになる)のマスク、『変身』の掛け声がない、主役がバイクを所有せず、サポートメンバーが運転する乗用車で移動する等、およそ従来の仮面ライダー的な要素を廃した。
また主役である響鬼のスーツアクターはアギト以降主役ライダーを演じた高岩 成二ではなく2号ライダーを演じてきた伊藤 慎を起用した。
内容としては、『仮面ライダーアギト』以降、シリーズの特徴となっていた多くの伏線を散りばめた難解複雑な謎解き要素は本作では廃止され、代わりに作品の重要人物少年・明日夢の成長譚が本作の物語の最大の特徴となっている。
内容も前番組『仮面ライダー剣』と異なり、ハード・シリアスな部分を極力抑えた明るい作風が心掛けられた。
縦書きのタイトルロゴやスタッフクレジット、筆文字のカット挿入、ミュージカル的な演出など、これまでのシリーズとは違う試みがなされている。
しかし話数が進むにつれて、いずれも徐々に見られなくなっていった。
主役には従来の若手俳優ではなく、役者として著名で尚且つ当時33歳の細川 茂樹が起用され、俳優本人・役の上でも最年長の現役主役ライダーとなる。
細川は同時期にNHK大河ドラマにも出演していたため、スケジュール調整が厳しく、そのため本作の前半は主役ライダーとしては、出番の少ないものとなっている(前半では変身しない回も多々ある)。
主要キャストもベテランから新人まで、舞台やVシネマ、単館系映画等、各方面で知名度の高い俳優を起用している。
そのため、レギュラー出演者の平均年齢は比較的高い。
前期OPはインストゥルメンタルで、『クウガ』以来にEDが復活し(挿入歌としてのEDは本作には無い)、歌手には布施 明を起用した。
上記の特徴から本シリーズの中でも極めて異色作と見られる場合が多い。
プロデューサー・高寺 成紀は製作発表の場で、「『響鬼』は平成の『仮面ライダーアマゾン』」と形容し、仮面ライダーの既成概念にとらわれず、新たな路線を目指す様は、『アマゾン』にも通じるといえる。
また前半のメインスタッフは『クウガ』と共通するため作品のテーマなどは『クウガ』に通ずるものもあった。
【制作】
東映側のチーフプロデューサーは、『仮面ライダークウガ』を担当した高寺 成紀が担当し、三十之巻以降および劇場版は白倉 伸一郎へ交代した(→プロデューサー交代騒動参照)。
設定スタッフの一員だった片岡 力の著作『「仮面ライダー響鬼」の事情』によると、2004年、平成仮面ライダーシリーズは前作『仮面ライダー剣』の平均視聴率、玩具の売れ行き不振から一旦終了させるつもりでいたらしく、高寺を始めとする東映スタッフは後番組には同じ石ノ森原作の『変身忍者 嵐』を基にした新作を予定していた。
しかしスポンサーであるバンダイの意向により次回作も仮面ライダーでいくことになり、新作の構想をすべて仮面ライダーに置き換えたという。
そのため響鬼の姿は他のライダーと比べると異色さが際立ったものとなっている。
【評価】
本作の玩具等の売り上げは前作を更に下回り歴代最低を記録、プロデューサー高寺もこのことについて「新要素が全面的に受け入れられた訳ではなかった」「子供は思っていた以上に保守的だった」と特撮雑誌でコメントした。
また次作『仮面ライダーカブト』は従来の『仮面ライダー』らしい要素を多く含ませた作品となった。
また内容についても、プロデューサー交代後の変化を巡り大きな物議となった(→プロデューサー交代騒動参照)。
…『その2』に続きます。