今年の4月にアメリカ付近で日蝕が起きました。

 日蝕は、月が太陽を蝕すという状態を指しますが、インドでは古くから「蝕」は良くない象意があると言い伝えられてきました。

 その星の持つエネルギーが蝕されてしまうのですから、負のエネルギーに変わってしまう状態になります。

 ですから、蝕を見ることは不吉な兆候であるとされ、蝕が始まるとインドの人々は家に籠り、断食をしてひたすらマントラを唱えるということが通例です。

 また、神々を祀る祭壇には、負のエネルギーが当たらないように赤い布をかけて、神々を守ります。

 

 日本においても「蝕」の象徴の物語としては、天照大神の岩戸隠れがそれに当たるのではないかと、私個人としてはそう思っています。太陽の神である天照大神が岩戸にお隠れになったために、地上が暗い状態が続いたため農作物は育たず、困り果てた国民は何とかして天照大神に外へ出てきてもらおうと、歌えや踊れやで神の心を引きつけ、ついには外へお出ましになることに成功したというお話がありましたが、これもある意味日蝕の状態ではないかと思います。

 光が隠れてしまう状態になる訳ですから、通常とは異なることが起きるという象意でもあります。通常とは異なる状態ということ自体が普通ではないので、だから不吉な兆候とされるようになったのです。

 

 このように通常とは異なる星の位置になるため、地球に及ぼす影響や私たち人間や動植物にも何らかの、いつもとは異なる力が働き、影響を受けるということが起きてきます。

 月蝕でなく、満月のときでさえも、私たちは月の引力に影響を受け、潮が満ち引きし、満月の時期には出産が増えたり、事件事故が多発するなどの統計が実際にあります。

 作り話とはいえ、満月の夜は狼男が出現するなんて伝説もあるように、星の力によって、私たちは何らかの影響を受けているものです。

 

 ちなみにインド占星術においては、ラーフは日蝕、ケートゥは月蝕を意味します。

 ラーフもケートゥも魔とされており、実際には星として実在しているものではありません。ラーフは西洋占星術的に言い換えると「ドラゴンヘッド」、ケートゥは「ドラゴンテール」と呼ばれています。

 ラーフは頭部しかないため、消化器官がないゆえに排出することができません。ですから、「もっと!」となるので欲の塊の状態になります。そのためラーフの象意はまさに「欲」を表しています。

 反対にケートゥは頭部がなく脚しかないので、欲がない状態になるので「無」の象意を表します。

 

 どちらも凶星ですが、蝕の意味とラーフ、ケートゥが表しているものが何なのかに気づき、その意味をどう捉えるかによって、吉となる場合もあるのです。

 それをいかに活かすかで、その後の過ごし方や自分自身の在り方が見えてくるのではないでしょうか。