バッハのBWV1001ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガは、フーガの傑作だと思います。


このフーガは、バッハ自身がBWV1000のリュート組曲として編曲しているので、ギターにも馴染みのある曲です。


ギター用としては幾つもの編曲があり、昔はセゴヴィア編でだいぶ練習しました。


大学時代の友人がチェンバロによる演奏をfacebookにアップしているのを見て、改めて練習を始めてみました。


亡き平田宏先生のレッスンでは、細かな運指の指導もして頂き、一通り最後まで弾けるようにしたはずですが、20年くらいはまともに弾いていないので、今では初見のようにしか弾けません。





参考にヴァイオリン演奏を聴いて見ようと取り出したのが、ユリア・フィッシャーのアルバムです。





ユリア・フィッシャーは、野球で言うなら大谷翔平選手の様な天才です。


大きなコンクールで8回優勝していて、そのうちの3回は、何とピアノのコンクールなのです。


デッカからは、ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲の演奏が1枚のDVDに収められていて、これは一夜のコンサートのライブです。



大谷翔平選手がピッチャーとして連続三振をとった直後、バッターボックスに入りホームランを打つようなものです。


23歳で大学の教授になり、これはドイツでは史上最少年の教授のようです。


これもカウントすると、3刀流ですね。


バッハの無伴奏ソナタとパルティータの全曲録音は、21歳の時のアルバムです。


気をてらった所が一つも無く、実にのびやかで、美しい音です。


こにあたりはコパチンスカヤのタイプとは随分異なります。


まるで一人で練習している時の様子を録音したかのような自然体の演奏ですが、同時に唯一無二の音楽を感じさせる事に驚かされます。


ギターはヴァイオリンと違って、弾いた音は減衰していくので、ヴァイオリンのボウイングの様に伸びやかさを出すのは難しく、ギターを弾く者からすると羨ましさがあります。


一方で、ギターは4本の弦を同時に弾けるのに対して、ヴァイオリンは2弦までなので、3声以上のフーガの場合、ギターの方が有利です。


ヴァイオリンは機能的に制約があるわけですが、3弦あるいは4弦を同時に近く鳴らそうとしてダウンボウイングする時の音のズレは魅力的です。


昔はヴァイオリンがオリジナルの曲をギターで弾く時、わざと音をずらして弾くようなスタイルもありました。


ユリア・フィッシャーのフーガは、ゆっくり目で、弱音が特に美しく響きます。


演奏時間は、5分55秒。


チェンバロのグスタフ・レオンハルトの演奏は、5分4秒で、ユリア・フィッシャーより早いですが、落ち着いた音楽になっています。


ただ、音数が多いせいか、ヴァイオリンと比べるとゴチャついた印象があります。


鍵盤楽器の編曲では、音数を多くしたくなるのでしょうか。


久しぶりにセゴヴィアのCDを聴いてみると、5分7秒で、レオンハルトと、ほぼ同じくらいの時間です。


印象的には、もっと早い速度で弾いているように感じていたので意外でした。


その印象があったので、練習ではかなり早いテンポで弾こうとしていた事に気がつきました。


久しぶりに練習していて、こんなにも難しかったかなあと思っていたのですが、これで完奏のハードルが下がりました。