寝る時には、いつも音楽かポッドキャストを聴くために、耳にはイヤフォンを入れます。
どうかすると一晩中鳴り続けているので、あまり身体には良くないのだろうとは思います。
ただ何かに気を取られて眠りにつかないと、考え事をしてしまい眠れないのです。
こんな事を、もう20年以上続けています。
3日ほど前、午前4時頃に賑やかな曲で眼を覚ましました。
心惹かれたので曲名を調べると、ショスタコーヴィッチが作曲した「女ひとり」と言う映画で使われている1曲であることがわかりました。
テノールの朗々とした歌声と、ショスタコーヴィッチ特有のユーモアあふれるオーケストレーションの組み合わせが魅力的な曲です。
ロシア語なので良くは分かりませんが、「ハラショー」が何度も聴こえるので、「素晴らしい!」を連呼しているようです。
明け方前の半分眠っている状態でAmazonを検索したところ、ナクソスからCDが出ていたのでそのまま注文してしまいました。
ナクソスは、クラシック音楽の百科事典を目指しているかのように、網羅的にアルバムをリリースするのが特徴のレーベルです。
こういう曲まで用意してあるナクソスはさすがです。
ショスタコーヴィッチは交響曲がよく知られています。
社会主義体制に制限された中で曲を作らなければならない状況で、本当に表現したい事をどう仕込んでいくかという葛藤が独特の作風となって表れているように思います。
音楽が素直ではなく、皮肉に溢れています。
実際、曲が体制に合わずに眼をつけられ、窮地に立たされた事もありました。
それを挽回したのが、「革命」と言う副題が付けられた交響曲第5番でした。
まるでラヴェルの「ボレロ」のように最弱音から最強音までゆっくり盛り上げていく交響曲第7番「レニングラード」は、戦争を鼓舞しているような曲で、軍隊が破壊しながら進行し、エスカレートする様子を想像させます。
15ある交響曲は、どれも緊張感を強いられるものばかりです。
一方で、映画音楽などの、どちらかと言うと大衆向けの曲になると、途端に楽しい気分させてくれ、メロディーメーカーの顔を見せます。
どちらが本当の顔なのかはわかりませんが、ショスタコーヴィチにとって、交響曲は特別な存在だったのでしょう。
映画「第一軍用列車」で使われたワルツ第2番は、どこか昭和のサーカスをイメージさせるノスタルジックな曲です。
この曲は、「JAZZ SUITE No.2」の中の1曲として聞くことができます。
またイタリアを舞台にした映画「馬あぶ」には、2つの美しい曲があります。
「馬あぶ」とは、おかしなタイトルですが、主人公のあだ名だそうです。
「ロマンス」は浅田真央さんが曲として使っていたので、聴けば「ああ、あれか」と分かると思います。
ヴァイオリンのソロが美しいメロディを奏でます。
「小品」は、心に刺さるような美しく哀しみを感じさせる曲です。
どちらも、12曲からなる「GADFLY(馬あぶ) Suite Op.97a」の中に入っていますが、「小品」は、ピアニストのアシュケナージが「ショスタコーヴィチ:ピアノ作品集」の中で取り上げていて、なかなかグッとくる演奏です。
これよりも好きな演奏は、ギタリストのジョン・ウィリアムスがデュエットアルバム「月とカマキリ」の最後の曲として入れているものです。
ギターの音色の美しさが、この曲の美しさを最大限に引き出していて、涙無くしては聴けません。
無いものねだりですが、もしショスタコーヴィッチがアメリカに亡命してくれていたら、美しく親しみやすい曲や、ガーシュインばりの楽しい曲を沢山残してくれたでしょう。