クラシック音楽の面白さの一つに、同一楽譜から生まれる様々な解釈の違いを楽しむということがあります。
同じ楽譜を演奏しても、演奏家によって、テンポ、強弱の付け方、アーティキュレーションの違いがあるだけではなく、時には音を加えたり、ばっさりと小節を削除される事もあるので、興味は尽きません。
クラシックに興味がない人からすると意外かもしれませんが、ブームというのもあります。
今年はベートーヴェンの生誕250年の年にあたるので、コロナ禍でなければ、色々なイベントもあったでしょう。
古楽器を使った演奏がブームになった時期もありました。
古楽器を使うと、今まで聞きなれた現代楽器による演奏も、まったく違った音楽に聴こえてきます。
歯切れが良くなり、多くの場合、テンポも速くなり、活きいきとした音楽として聴こえます。
ギターが好きな私からすると、楽器の違いも興味の対象で、ロマニリョスは気品があっていいなあとか、ハウザーの芯のある音はたまらないなあ、などという聴き方をするので、同じ曲でもいくつもの演奏を聞きたくなります。
素晴らしい曲に出会ったときは、もっといい演奏があるんじゃないかと思ってCDを探すので、きりがありません。
こういった興味の視点は、年齢と共に変わってくるように思います。
クラシック音楽を知った小学生の頃は、情報もないし、お金ももちろんないので、やっと手に入れた1枚のレコードが、その曲の扉になり、基準となります。
相当量の音楽を聴いたはずの今でも、そのころ聴いた演奏は、一定のポジションを保ち続けています。
少し成長して、働き始めてお金も使えるようになると、情報量も増え、やっぱりクラシック音楽はこうでなくちゃ、という耳年増的な基準ができてきます。
音楽に深みを求める時期があったり、サウンドのきらびやかさを求める時期もありました。
還暦を過ぎた今はどうかというと、静けさを求める一方で、斬新さや過激さ、チャレンジングな演奏を求める自分もいます。
また、受け入れる音楽の幅も広くなりました。
以前はピンとこなかった、クロノスカルテットの演奏する現代音楽も面白く感じます。
ピアノで言うと、H.J.リムや、ファジル・サイなどの演奏が楽しくてしょうがありません。
ルネッサンス音楽の過激さも面白いし、バッハもゲーベルのような快速演奏を聴くと、うきうきしてきます。
何かの殻を破りたい自分がいるのかもしれません。