オーディオをやっている人の間で知られている言葉に、「最後はロクハンに戻る」というのがあります。
ロクハンというのは、6インチ半のことで、スピーカの口径を指しています。
センチでいうと、16センチ。
16センチ1本で、低音から高音までをカバーする、フルレンジスピーカーをロクハンと言います。
クラシック音楽に触れて、ほぼ同時に真空管アンプやスピーカーシステムを作り出したのは小学生の時でした。
完全に父親の影響で、これは、私の弟も受け継ぎました。
父は東北の震災の時にちょうど手術の真っ最中で、それが大きな原因となり亡くなってしまいましたが、弟と3人揃うと、たいていはギターかオーディオの話に花が咲いたものでした。
小学生の小遣いでオーディオ装置を買うことは無理なので、当時はクズ屋さんと言ってたゴミを回収していた店をまわって、100円とか200円でラジオや蓄音器を買ってきて、それをバラして部品を集めていました。
ロクハンのスピーカーユニットは、パイオニア、ダイヤトーン、コーラルと言ったメーカーから出されていて、やっと手に入れたのが、パイオニアのPE-16というユニットでした。
後ろには、マグネットを覆うカバーが付いていて、スピーカーボックスに入れてしまうには勿体無いほど格好良く見えました。
値段は1本2500円前後で、今から考えると破格の安さです。
ロクハンの良さは、聴き疲れしない素直な音調にあります。
重低音や超高音が出るわけではないので、ハイレゾ音楽の再生には向きません。
アンプも真空管と相性が良く、できれば音源もレコードにしたい。
なんというか、ほっとする時間を過ごせそうな音なのです。
それでも、音楽を楽しむのに必要な芯を捉えた音を出してくれます。
今メインで使っているスピーカーとは、価格比で数百倍の開きがあります。
それでも気になるのがロクハンです。
程度の良いものはなかなか手に入らないけれど、時間をかけて手許に集めたいのが、次のスピーカーです。
パイオニア PE-16と PIM-16
コーラル FLAT-6
ダイヤトーン P-610
ナショナル 6P-W1
フォステクスが無いじゃないか、という人がいるかもしれません。
明かにフォステクスのスピーカーは上記のロクハンより良い音がするはずです。
ただ、昭和32年生まれで、小学生の時からオーディオにはまっていた私からすると、フォステクス(当時はフォスター電機)というのは後発で、私の心のストライクゾーンスからは外れているのです。
なにしろ、手に入れたい動機は、ノスタルジックな気持ちですから。
上に並べたロクハンは、弟と一緒に部品集めしながら真空管アンプ作りに熱中していたころを思い出させてくれるのです。
歳をとってきたせいでしょうね。
つい最近オークションで、やっと程度の良いパイオニアのPIM-16を手に入れることができました。
厳密には、PIM-16相当のものです。
CS-27というスピーカーボックスとセットになったシステムとして売られていたものに、これが付いていたのでした。
中学生の頃に手に入れたPE-16よりも安価で、当時は1本2000円しなかったと思います。
正面から見たデザインが好きでしたが、音はPE-16の方が良かったと思います。
振動面のコーン紙が2重構造になっていて、内側の白っぽいほうが高音担当です。
ソウルノートのアンプに繋いで鳴らしてみると、ビックリするくらい高音部と低音部が伸びません。
それでもしばらく聴いていると、耳も馴染み、ああこれこれ、という音になりました。
ガッチリした、もう少し容量のあるボックスに入れると、かなりいい感じになりそうです。
数年かければ、他のロクハンも手に入ると思うので、コンパネ位の大きな平面バッフル板に全部取り付けて、切り替えて聴けるようにできたらなと思っています。