東京都のロボット産業活性化事業の公募に採択され、1月から案内ロボットの開発に取り組んでいます。
昨年11月に墨田区でオープンした「すみだ北斎美術館」を舞台に、現在、10月と12月に実証実験を行う準備を進めています。
3つの組織が共同でこのテーマにあたっているのですが、私の会社は案内内容、つまりロボットにしゃべらせる内容を担当しています。
「すみだ北斎美術館」の常設展の前室には、さりげなく数点の展示が行われています。
実はその展示内容は、オペラで言うと「序曲」に相当するくらい密度の高いものです。
前室の内容をどう楽しめるかが、常設展の内容を楽しむための大きなポイントになっているのです。
その部分を「ロボットで案内」するわけです。
展示内容を調べれば調べるほど多くを語りたくなります。
相手が葛飾北斎ですから。
そうは言っても、案内ロボットに、そんなにだらだらとしゃべるわけにはいきません。
1分くらいの間に、耳から入る情報だけで、来館者に満足していただく必要があります。
インパクトのあるキャッチコピーとは違い、説明内容に実体がなければいけません。
このために、信頼できそうな本を何冊も読むのですが、表に出せるのはほんの少しです。
これまで教育用ビデオを1万本以上制作してきましたが、それとは違う難しさがあります。
1分か2分の内容に「力」を持たせるには、その何倍、何十倍もの引き出しを用意し、伝えたいことの勝ち抜き戦をして絞り込まないと、底の浅さが見えてしまいます。
見えてしまうのはかまいません。
でも、仕事に取り組む姿勢としてはそれではだめだと思いませんか。
全室には、北斎最大級の作品「須佐之男命厄神退治之図」が掲げられています。
この作品は関東大震災で消失しました。
それを1枚の白黒写真をもとに、凸版印刷が中心となり2年の歳月をかけて復元しました。
その復元過程の妥協の無さには、すさまじいものがあります。
展示作品をみると、そのすさまじさは簡単にはわかりません。
しかし、復元作業がそこそこであったなら、復元作品の前で足を止めさせる「力」は無かったと思います。
その復元過程から、今更ながら、仕事への取り組み方を学ばせていただきました。
このことを少ない言葉で案内ロボットに伝えさせることが大きな課題です。