ベイヌムの指揮する「ボレロ」に感銘を受けて、他のアルバムを手に入れて衝撃を受けたのが、シューベルトの交響曲第6番でした。
シューベルトの交響曲第8番「未完成」はクラシック音楽好きでなくても題名は聞いたことはあるでしょうし、曲を聴けば「ああ、これか」と思うような、超有名曲です。
他には「ザ・グレート」と副題がついている第9番の天国的な音楽も名曲です。
他の番号が付いた曲は、これまで何度もチャレンジをしたものの、どうも出来が中途半端な気がして、最後まで聴き通せずに終わっていました。
この考えが、ベイヌムの指揮する第6番を聴いて一変しました。
オーケストラは、コンセルトヘボウ!
なんとチャーミングで、なんと激しい曲なのか!
ベイヌムのタクトから引き出される音楽は、活き活きして、躍動的で、シューベルトの良さが見事に引き出されています。
録音は1957年で、残念ながらモノラル。でも、そんなことは、一切問題にならないくらいの熱演です。
特に第2楽章は、すばらしくチャーミングな曲だと思った次の瞬間、ベートーヴェンの「運命」のような激しい音楽が現われます。
この切り替わりの自在さが素晴らしい!
この演奏を聴いてから、手元にあった何枚かの同曲を聴いてみました。
どれも駄目でした。
折り目正しく美しい演奏ですが、チャーミングさと激しさが瞬時に変化するような演奏になっていないのです。
ベイヌムの演奏で最初にシューベルトの交響曲を知ったら、一連の交響曲が好きになったか、というと、そうでもなさそうです。
ベイヌムもいいけれど、こっちもいいな、とはなりません。
あるブログで、なぜこの演奏がもっと注目されないのか、と書いてた方がいらっしゃいましたが、まったく同感です。
残念ながら、ベイヌムはシューベルトの交響曲の全曲録音はしていないようです。
でも、世の中は広い。
きっと、ベイヌムのような演奏をしてくれる指揮者がいることを期待して、6番が目に付いたら買ってしまうのだろうと思います。
それとも、残りの人生を考えると、ベイヌムの1枚だけで十分なのかもしれません。