世の中の音楽の楽しみ方の主流は、ダウンロード+スマホになっているようです。

 

移動の時にはとても便利で、私も購入したCDは、一度ディスクに取り込んで、必要に応じて持ち出すようにしています。

 

ただ、これはあくまでも、外で音楽を聴くための仕方がない方法として利用しています。

 

ヘッドフォンやイヤフォンの音質は相当良くなっているとは言え、両耳に直接音を入れてしまう方法と、スピーカーやライブ演奏のように、からだ全体で音を感じる音楽とはどうしても差が出てしまいます。

 

ポータブルオーディオでは、音楽が流れている空間を感じることができません。

 

そんなわけで、室内にいる時は、なるべくスピーカーで聴くようにしています。

 

LPレコードを知らない世代は何も感じないかもしれませんが、CDが登場した時は、A面が終わったらレコードを裏返してB面にする手間なしに、一気にアルバム全部を再生できることに感動しました。

 

聴きながら寝てしまっても、勝手に止まってくれるのも楽ちんだなと思いました。

 

アナログレーコードでは、そうは行きません。

 

オートリターンがあれば別ですが、針を落としてからうっかり寝てしまうと、眼が覚めるまで内周の無音部分を、「ボツッ、ボツッ」と音をさせながら再生し続けます。

 

アナログレコードを再生する時は、一連の儀式のような動作が必要になります。

 

レコードの棚を眺めながら、今の気分にぴったい会いそうな1枚を選び、ビニール袋からジャケットを取り出し、さらにスリーブに入っているレコードを取り出して、ターンテーブルに載せます。

 

ホコリが目立つようであれば、クリーニングします。

 

カートリッジが交換できるようであれば、アルバムに合わせてカートリッジを選び、針圧を調整し、インサイドフォースキャンセラーも調整します。

 

アンプのボリュームを下げてから盤面に針を落として、再びボリュームをあげます。

 

こうやって書いてみても、なんとも面倒です。

 

もちろん、もっとアバウトにやっても構わないのですが、どちらにしても一種の儀式みたいな一連の動作が必要になるので、心理的には、よーし、じっくり音楽を聴こう、という気分になります。

 

レコードが高価だった頃は、やっと手に入れたアルバムを、それこそ「溝がすりきれる」という言い方をするほど聴いた経験をした方は多いと思います。

 

照明の明るさを落として、左右のスピーカーの中央に座り、さながらコンサート会場に行って音楽を聴くようにじっくりと耳を傾ける。

 

久しぶりに取り出したアルバムであれば、ていねに書かれたライナーノーツに目を通します。

 

ライナーノーツの情報量はかなりあって、これで沢山の勉強をさせてもらいました。

 

そういう楽しみ方ができるのがアナログレコードだと思います。

 

出番は少ないのですが、アナログレコードを聴く時間は、そのカドがない音とともに、なかなか贅沢なひと時になります。