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カルロ・リッツィ指揮
ネーデルランド・フィルハーモニー管弦楽団 16分43秒
録音:2012年 アムステルダム、ブルース・ファン・ベルラーヘ
TACET B207
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カルロ・リッツィは、1960年イタリアのミラノで生まれた指揮者です。
このアルバムでは、ネーデルランド・フィルハーモニー管弦楽団を指揮しています。
レーベルはドイツのTACETで、真空管式のマイクで録音されたものです。
私のアルバムはCDですが、LP盤もあり、これはちょっと変わっています。
LPは、外周に針を落とすと内側に向かって進んで行くのが普通ですが、このLP盤では、内周に針を落とすと、外周に向かって進んで行くのです。
これは、「ボレロ」の特性を考えると、とても理にかなっています。
ターンテーブルは、常に一定回転で回るので、一定時間で針の進む距離を考えると、外周では長くなり、内周では短くなります。
レコードは、音の振動を溝に刻むので、大音量や重低音では溝が深くなります。
「ボレロ」は、最初は最弱音で始まり、最後は大音量で終わるので、通常のLPレコードだと、単位時間に進む距離が短い内周側に大音量かつ楽器の情報量の多い溝を切らなくてはなりません。
幅の狭いところに、物理的にギュウギュウ詰めするわけで、最後のクライマックスを歪みなく再生することは至難の技です。
廉価版初期のころ、片面に長めの交響曲1曲を詰め込んでしまう「お得な」企画では、最後に歪みっぽくなるLPがありました。
外周側にクライマックスを持っていけば、大音量の情報を溝に刻みやすくなるはずで、TACETの試みは理にかなっています。
さらに、このアルバムでは、オーケストラを360度に配置して録音しているそうで、録音には非常にこだわったアルバムといえます。
実際にステレオで聴いてみても録音の優秀さは素晴らしく、順に変わるソロ楽器の位置がよくわかります。
演奏では、管楽器が端正で安定したリズムの上に載って、自由に妙技を披露しているように聴こえて、楽しい「ボレロ」となっています。
このアルバムは、ラヴェルの管弦楽曲を集めてあり、「ボレロ」以外の曲、たとえば「マ・メール・ロア」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」なども、楽器の分離のいい、美しい演奏です。
なかなか気に入りました。