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アウトゥーロ・トスカニーニ指揮 
NBC交響楽団 14分14秒
録音:1939年
日本フルトヴェングラー協会 WFJ-73~74
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上のアルバムの写真を見て、おや、と思った方がおられると思います。写真は、フルトヴェングラーです。

本当は、下のアルバムが手に入れば値段的にも安くてよかったはずなのですが、なかなか出会うことがありませんでした。

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フルトヴェングラーのアルバムは、「日本フルトヴェングラー協会」が編集領布している2枚組みのCDで、実はこの中のボーナストラックとしてトスカニーニの「ボレロ」が入っていたのでした。

当時、指揮者として双璧をなし、その演奏スタイルも異なるフルトヴェングラーとトスカニーニが1枚に収められているというのは面白いことです。

解説によると、フルトヴェングラーのラヴェルでは、「ボレロ」が最も面白らしいく、残念なことに録音が残されていないので、代わりにトスカニーニの録音(ライブ録音)を入れたということでした。


トスカニーニの演奏する「ボレロ」は、作曲者であるラヴェルから「テンポが速すぎるよ」言われ、それに対してトスカニーニは、「このテンポで演奏すべき。あなたはわかっていない」と返したというエピソードが残されています。

トスカニーニの演奏は14分14秒で、ラヴェル自身が指揮をして残した録音は16分19秒ですから、2分くらいの差です。

14分14秒は早い演奏に入りますが、聴いた感じではそれほどせかせかしている印象は受けません。

トスカニーニの演奏ですから、一糸乱れずにキビキビと進み、ぐいぐいと盛り上げていくのだろうと思っていました。

ところが間逆で、管楽器のミスは目立ち、十糸くらい乱れています。

トローンボーンのソロは、いつもハラハラさせられ、この演奏では期待を裏切らず、音を外します。

面白いのは、トローンボーンのソロから、トスカニーニは大きくテンポを揺らします。

ソロにトスカニーニが合わせているようにも聴こえますが、それ以降は、テンポルバートかけまくりなので、トスカニーニの指示なのでしょう。

ちょっと意外です。

テンポルバートについては、最近の演奏ではほとんど見られません。

言葉を選ばずに書くと、ちょっと素人っぽく、ダサく感じてしまいます。

「ボレロ」の魅力は、繰り返される一定のリズムとテンポ、音量の増大で、これが聴衆を酔わせ感動させる大きな要因だと思うので、トスカニーニの演奏はここからは外れています。

ラヴェルの演奏を聴き返してみると、ラヴェルもトローンボーンのところでは大きくテンポを動かしています。

楽譜には、テヌートの指示はあっても、テンポルバートさせるような指示は見当たりません。

ラヴェルの録音は1930年、トスカニーニの録音は1939年。

時代性なのかと思って、クセーヴィツキーが1930年に録音した演奏を聴いてみると、とくにテンポを揺らしてはいませんでした。

ちなみに、クーセヴィツキーの演奏時間は13分23秒とかなり快速で、スカッとする演奏です。

トスカニーニは、カンタービレ、つまり歌うように演奏するのが特徴とされていますが、この「ボレロ」はちょっとやりすぎな感じがしました。

SP時代の録音なので会場の雰囲気は聴き取れませんが、それでも演奏後はブラボーの嵐だったので、すさまじい演奏だったことは確かでしょう。