このところ、人工知能をテーマとした映画をいくつか見返しています。

 

まだ入り口に立った程度ですが、多少なりとも人口知能の歴史と現状を勉強してから見直すと、その見え方がまったく違ってきました。

 

「トランセンデンス」は、2014年に公開されたジョニー・デップ主演の映画です。

「トランセンデンス」の意味は「超越」なので、2045年問題をテーマにしている映画と言えます。

 

多少のネタバレはありますので、ご容赦ください。

 

主人公ウィルととその奥さんエヴリンは、2人とも優秀な人口知能の科学者です。

 

人間の脳をそのまま人工知能上にインストールするということを研究しています。

 

ある日、ピストルで撃たれたウィルの知能を、ウィルが死ぬ前にエヴエインがコンピュータにアップロードして、ウィルを生かそうとします。

 

やがてウィルは亡くなり、人工知能としてコンピュータ上に復活し、そこから話が展開していく、というようなストーリーです。

 

最初見たときは、なんだかよく分からない内容だし、まったくのSFだなと思いました。

 

ところが、ある本を読んでから映画を見ると、その内容は、近い未来に待ち受けるリアルな脅威として、真実味を帯びてきました。

その本は、ジェイムズ・バラッド著の「人工知能 人類最悪にして最後の発明」です。

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今後起こるであろう人工知能による問題点と課題を、丹念な取材と、優れた考察によりまとめた名著です。

 

「トランセンデンス」の内容は、この本をシナリオ化したのではと思えるほど、科学的根拠に基づいています。

 

感心したのがナノマシーンの扱い方でした。

 

ナノマシーンは、非常に期待されているナノテクノロジーです。

 

ただし、たとえば自己複製をする機能は人間の知恵では実現が難しく、その課題は、人間の知能を超えた人工超知能が解決するだろうと言われています。

 

映画の中でのウィルは、脅威的なスピードで能力を上げていきますが、それでもナノマシーンの自己複製と、分子レベルの組み替え、そして壊れた組織の再生の実現には「2年」を要しています。

 

人工超知能でも2年間かかったというのが、話をよりリアルなものとしています。

 

また、主人公を撃ったのは、人工知能の技術が進んだ時の脅威に対して、力で阻止しようという集団で、こういう事態も起こりうることです。

 

人の脳をコンピュータに移植できるのかという疑問もありますが、そもそも、脳内では電気のオンオフの状態で機能しているので、実現できないと言い切ることのほうが無理があります。

 

実際、発明家で人口知能の世界的権威である、カーツワイルはその時が来るまでに死なないために、サプリメントを多用しながら食生活に気を使っているそうです。

人口知能に興味を持って映画を見返したところ、大きく印象が変わり、映画の言いたかったことがよく理解できたわけで、B級と言われる映画も俄然面白くなって来ました。

これは他の分野の映画にも言えるのでしょうね。
 

たとえば、哲学について興味を持ち、勉強してからある作品を見ると、言いたかったことが見えてくるでしょう。

人生をもっと楽しもうと思ったら、勉強を続けることが必要なのだと思います。