12月6日(土)に、Hakujuホールで行われた、マルコ・トプチーのギターリサイタルに行ってきました。
マルコ・トプチーは、昨年の東京国際コンクールで優勝したウクライナ出身のギタリストです。
プログラムは、次の通り。
第一部
エチュード第11番(ヴィラ・ロボス)
ヴェニスの謝肉祭(タレガ)
森に夢見る(バリオス)
最後のトレモロ(バリオス)
大聖堂(バリオス)
悪魔の奇想曲(テデスコ)
第二部
展覧会の絵(ムソルグスキー~トプチー編)
第一部では、調弦に非常に時間をかけるのが印象的でした。
「神経質」という言葉が浮かぶほどの時間のかけ方で、出てくる音楽もそうなのかと思いましたが、「神経質」が非常に良い方向に働いていて、隅々まで考えられた音楽は、ふくよかな音に加えてダイナミックさもあり、なかなか楽しめました。
テクニックもしなやかで、不安なく聴くことができました。
第二部の「展覧会の絵」は、お目当ての曲でした。
第一部の入りはもうひとつだったのですが、第二部では客が増えていたので、やはり「展覧会の絵」に期待していた人が多かったのだと思います。
「展覧会の絵」のギター版は、かの山下和仁さんによって、ある時期、ギター業界だけではなく、クラシック音楽の世界に衝撃を与えました。
私は、1981年6月29日にカザルス・ホールで行われた「展覧会の絵」のレコード発売記念リサイタルで実演に接しました。
当時のメモには、次のように書いてありました。
「展覧会の絵は、ただただ驚くばかり。最後はオーケストラと同じくらい圧倒され感動した。このあとしばらく、部屋を暗くして、買ったLPを何度も聴いて、このコンサートの感動を再現しようとした」
ギター1本とは思えない迫力だったのでした。
トプチーは、あの感動を超えられるのか、ということを体験したくて、しばらく遠のいていたギター・リサイタルに来たのでした。
編曲は、山下氏の版を参考にした、トプチー自身のものだったようですが、全体の印象は、山下編とあまり変わらないように思いました。
山下氏との違いは、音のまろやかさとテクニックのしなやかさ。
山下氏はもちろん超絶技巧の持ち主ですが、その弾きぶりはめまぐるしく、さらに時には椅子から腰を浮かすくらい体全体で表現するスタイルでした。
当時の山下氏と比べるとどんなギタリストでも大人しく見えてしまうので、比べてもしょうがないかもしれません。
演奏は、第一部と同じように、細部の音の動きまで考えられ、ギター編まで受け入れてしまう原曲の凄さもわかるものでした。
キエフの大門の迫力も十分。
ブラボーの声やスタンディング・オベーションも起こり、素晴らしいものでした。
その余波で、カーテンコールは収まらず、アンコールは3曲も披露してくれました。
アルハンブラの想い出(タレガ)
エチュード第4番(ヴィラ・ロボス)
セビーリャ(アルベニス)
素晴らしい演奏ではあったのですが、私にとっては、やはり山下氏の演奏から受けた衝撃はありませんでした。
それは、演奏の内容というより、やはり、あの「展覧会の絵」をギター1本で表現した最初の演奏だったかどうか、ということも関係しているかもしれません。
「展覧会の絵」のギター版は、実演ではめったに聴けません。
この夜、初めて聴いた若い人にはどうだったのか、興味があります。
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