セゴビアのバッハ演奏と言えばなんと言ってもシャコンヌです。中ほどに出てくるあの怒涛のようなアルペジオは深い感動を呼びます。平田先生はデビュー後のリサイタル(1974年)でシャコンヌをプログラムに入れましたが、残念ながらあまり良い評価を得られなかった受けたと話していました。

時々テーマを弾くことがありましたが、それは楽器の調子、特に密度の高い音が出せるかどうかを確かめていたように思います。


出だしの2,3小節はふやけた音で弾かれると、いきなり気持ちがそがれてしまうので、集中力を音に込めた演奏が必要です。

シャコンヌはとても好きな曲ですが、あまりにもハードルが高すぎて、遊びで弾くことはあってもレッスンして頂くことは考えもしませんでした。でもセゴビアのバッハは大好きなので、いくつかの小品を見てもらいました。


先生のバッハ解釈はセゴビアの影響を受けてはいますが、門下生がクラシカルギター・コンクールで優勝したときの自由曲は「プレリュード、フーガとアレグロ」で、その解釈が高く評価されたことからも、実に的を得た魅力的なバッハ解釈だったのだと思います。

というようなことを書いておいて何ですが、今回はポンセ編、しかもほとんど改編といってもいいようなチェロ組曲1番のプレリュードです。先生はこれを演奏会のプログラムに入れるために練習していたことがあって、「これ弾いてみる?」と勧められました。


オリジナルにやたらと音が加えてあって、しかもそれがちょっとモダンな感じで低音がめまぐるしく動いて面白そうなのでやってみることにしました。

楽譜は”DICIONES MUSICALES YOLOTL”という出版社から出されているもので、これには運指がいっさい書かれていないため、先生の楽譜から運指を書き写すことからはじめました。

たとえば再初の小節は2フレットで取ることもできるのですが、ここは5フレットのセーハではじめます。そうすると2拍目のレ→ラの動きでラを開放で取るために人差し指を半セーハにして弾くようにします。こんな細かな芸が必要となる個所がいくつかあって、この曲を弾くときは、いつもと違う種類の楽器を弾くような気持ちになりました。

この編曲は低音の動きに面白さがあり、これを強調させるためなのか、音の変更がいくつかありました。セゴビアの演奏からのコピーだと思いますが、ポンセとセゴビアは二人で一緒に曲を完成さるような関係ですから、これをオリジナルと考えてもいいかもしれません。低音の変更個所をまとめてみます。

・9小節目の再初のソ#を、2分音符から4分音符に変え、2拍目に休符をいれる。
・10小節目3拍目に2分音符で、ラ(5弦開放)を加える。
・12小節目4拍目のミを1オクターブ高くする(4弦2フレット)。
・13小節目2拍目の4分音符のファを8分音符の
 ソ(4弦5フレット)→ファ#(4弦4フレット)に変更する。
・13小節目3拍目のファを4弦2フレットのミに変更する。
・13小節目4拍目の4分音符のファを8分音符の
 レ(4弦開放)→ド#(5弦4フレット)に変更する。
・14小節目2拍目に8分音符で、 ソ(3弦開放)
 ミ(4弦2フレット)を加える。
・14小節目3拍目の4分音符のシを2分音符に変える。
・24小節目3拍目に2分音符で、ラ(5弦開放)を加える。
・24小節目3拍目に2分音符で、ラ(5弦開放)を加える。

やってみると見た目どおり、やはり左手が大変でした。

この曲はアンコールとか、ちょっとくだけた場所で「こんなのどう?」といった感じで弾くのがいいかなと思います。バッハの曲と言うよりポンセの曲だと思ったほうが楽しく弾けるようです。

(記:2002年10月2日)

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