今から考えるとなんと無謀なことをしたのだろうと思うのですが、ギターを手にして間もなくの頃挑戦したのが、このアンダルーサとタレガの有名なアルハンブラの想い出でした。
なんときれいな曲なんだろう、なんとしても弾きたいと、楽譜もろくに読めないのに、録音を聞きながらカタコトの英語を話すように曲を仕上げていきました。
アルハンブラは、ギターを弾いたことがない多くの人が感じるように、どうやって伴奏とメロディーを一人で弾いているんだろうと不思議でなりませんでした。
ここでトレモロというテクニックを知ったわけですが、初心者には弾けるわけもなく、仕方が無いので音を一つ減らしてiとmの2本の指だけで”トレモロ風”に弾いていました。
アンダルーサもハーモニクスをどうやって弾いていいのかわからず、実音で弾いたりしていました。まるでめちゃくちゃですが、このとき読譜力が一気についたので、まあ良かったのかなと思います。高校2年のことです。
そんなわけで、アンダルーサは想い出のある曲なのですが、めちゃくちゃな覚え方をしたのがなんとなく残っていて、ずっと手を出せないでいました。ハーモニクスの部分も、苦手意識として残ってしまい、いつかは弾いてみたいと思いながら、敬遠していました。
ある日レッスンに行くと、平田先生はソファーでこのアンダルーサを弾いていました。
素晴らしい音楽だったので、挨拶もせずに演奏が終るまで聞いていました。
やはりいい曲です。
でも、先生の弾くアンダルーサは何か違いました。ハーモニクスでメロディーを弾く部分が無いのです。先生が弾くとしたらセゴビア編のはずで、私の記憶にあるセゴビアのアンダルーサは、ちゃんとハーモニクスで弾いていたはずです。
「それ、誰の編曲ですか?」
「セゴビアだよ」
「でもハーモニクスじゃないですね」
「あ、これね。こういう版もあるの。晩年はセゴビアもいろいろ弾きやすいように楽譜や運指を変えているんだけれど、やっぱりトシを意識していたんじゃないかな。この版ではアンダンテの1回目のメロディーをオクターブ下げて演奏しているんだけど、僕が思うに、晩年のセゴビアは音が聞こえにくくなっていたんじゃないかな」
「へえそうなんですか」
「うん、だからこの版は老人向き。やってみる?」
「ええ」
「楽譜は何持っている?」
「阿部保夫さんのグラナドス、アルベニス集があったと思います」
「あ、それならいいね。あの版はセゴビア編に近いから。でも中間部は全然違う・・。ちょっと待ってて」
そういって先生は自分で音をとった中間部の手書き譜をファックス電話機でコピーしてくれたのでした。
この曲はたくさんの書き込みがあるのですが、その中からいくつか。
・3小節目のメロディー開始のミ・ファ・ソはインテンポで弾き、次のシはテヌートで。6、7小節目も同じ。
・12小節目のアルペジオはややponti.気味で。
・andanteから始まる1回目のメロディーは1オクターブ下げ、2回目はハーモニクス無しの実音で弾く。このとき、ハーモニクスを意識した響きになるようにやや硬めのただし艶のある音で弾く。
アンダルーサはその頃の自分としてはめずらしく上手く仕上がり、発表会のほかに、会社の仲間と企画した群馬県大泉町でのコンサートでも演奏しました。
今は部分的に忘れているのですが、たくさん練習したので、少し練習すれば復帰できる数少ないレパートリー候補の曲です。全部忘れないうちに、おさらいしておかなきゃと思っています。
そしてもうひとつ。レッスンの時に先生がコピーしてくれた感熱紙の楽譜は、今では薄くなってしまいました。完全に消える前に、コピーしておかなきゃと思っています。今晩やろう。
(記:2002年10月3日)
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