バーバーの「弦楽のためのアダージョ」という美しい曲があります。
葬儀のような悲しい場面の音楽として使われることが多く、死とつながるイメージが出来上がっているような気がしますが、バーバーはそんなつもりで作ったのではないでしょう。
バルトークのルーマニア舞曲も、テレビの「劇的ビフォーアフター」で使われてから、リフォーム系の映像で使われることが多くなっているようです。
チャイコフスキーの美しい曲、アンダンテカンタービレは、深夜に流れていた美容整形医院のCMを見てから、美容整形に重なる曲になってしまいました。
バーバーの「弦楽のためのアダージョ」は、比較的大きな編成の弦楽アンサンブルとしての録音が圧倒的に多いのですが、オリジナルは、弦楽四重奏曲です。
オーケストラでの初演は、1936年11月5日にトスカニーニによって行われました。
バーバーは、この初演によって名声を決定的なものにしたそうです。
同じメロディーが繰り返されるうちに、心が浄化されていくようなこの曲は、もちろん大きな編成のアンサンブルでもいいのですが、もっとシンプルな、弦楽四重奏での演奏のほうが、心に強く響いてくるように思います。
リンゼイ弦楽四重奏団が演奏した録音をエアチェックしたテープは持っているのですが、CDは持っていませんでした。
CDショップに入ると必ず探すのですが、弦楽四重奏のアルバムは一度も見たことがありません。
そのアルバムを、横須賀のブックオフで発見しました。
しかも、250円で。
演奏は、チェスター四重奏団というアメリカの演奏家です。
録音された1990年の頃には、最も輝かしい若手の四重奏団であったらしいのですが、20年もたった今は、大ベテランの四重奏団となっているのでしょうね。
バーバーは、現代の作曲家ですから、現代の作曲家の曲とのカップリングが多いようで、リンゼイのアルバムでは、D.ウィレンとH.ウッドが、チェスターのアルバムでは、Q.ポーターとW.パイソンが収められていました。
アルバムの体裁としては、苦手な人が多い、現代音楽集ですね。
バーバーのアダージョも、第1楽章は、聴きやすいとは言え、現代音楽の香りに満ちています。
そのあとに、続く楽章が、天国のように美しいアダージョです。
第1楽章と続けて聴くことで、いっそう曲の透明感が増すようです。
弦楽四重奏版のアルバムはなかなか見つからないかもしれませんが、この曲が好きな方は、出会ったときに購入することをお勧めします。
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