前回の話の中で「群衆心理」という言葉が出てきましたが、相場で財をなした

ソロスの優れている所いくつもありますが、その中でも特徴的なのは「投資家の心理」

を読むことに長けていることを挙げたいと思います。

相場は人間が動かしている以上市場参加者の心理状態を知ることは当然重要です。

市場参加者の心理を的確に読んで相場の転換点を探る。これがソロスの基本的な

投資方法です。彼はその上、緻密に市場を分析し、彼の本質的な「本能」と「直感」

で相場を張るのです。

彼は自分の著書の中で「通常、市場参加者の価値判断は常にバイアスに満ちており、

一般的にバイアスが市場価格に影響を与える」と記しています。

そして、彼はこの点に関してのインタヴューで「私が主張したい点は、バイアスは

市場価格だけではなく、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)といわれるもの

にも影響を与えることだ。そこで再帰現象が重要となる。常に起こるわけではないが、

起こるときは、市場価格は別のパターンをたどる。それは、また別の役割を果たす。

それは単にファンダメンタルズと言われるものを反映するだけではない。それ自体が

ファンダメンタルズの一つとなり、価格の変動を形成するのだ。」と述べています。

市場参加者のバイアスが相場を大きく変動させ、それを読むのが重要だというわけです。

ソロスが学生のころ哲学者になろうと思っていたことと、相場の心を読むことは

無関係ではないということでしょうか。

ソロスの友人の一人はソロスの成功の理由を率直にこう指摘しています。

「彼の成功の最大の要因は、人の心理を読むのがうまいことだ。彼には、群衆心理がよく

理解できる。彼は、マーケッティングの達人のように、大勢の人があることに集中する

ことをうまく見抜くことができる。」

相場にはトレンドがあり、トレンドは行き過ぎた場合には必ず転換する。

ソロスはその転換点を見抜くことにかけては天才と言えるかもしれない。

しかし、その天才でも当然相場に負けることもある。

彼はそのことについて「人々は、わたしが間違いなど犯さないだろうと誤った認識を

もっている。これは、特に強調しておきたいのだが、私は、隣の住人と同じぐらい

間違いを犯す。しかし、私が自分でも優れていると思うところは、それを認めていることだ。

それが私の成功の秘密だ。私は、人間の認識は、生まれながらに過ちを犯すものだと確信

している。」