翌日、おやっさんの店でお昼ご飯を食べようと思い、洗濯や両替済をませてから寄ることにした。

スペインに来てもう直ぐ1ヶ月。
落ち着いていると言われていることの半分以上分かるようになったが、慌てているときや緊張すると頭が真っ白くなるのは、相変わらずだった。
そうなった場合は、待ってもらう、これしかなかった。
それがムリな精神状態の時には出直すと言って消えた。

ただ、最近は‥
一匹狼アジアンゆえ、覚えられているので、、
例えば切手や必ず頼むものは言わなくても、私を見ると「これかな(^_-)☆」と目の前に置いてくれていた。

一匹でも、切り離されている感じはなかった。
見えない綱で引き寄せられたり、緩められたりしているように思え、何かあっても大丈夫!と小さな歩みながらも進んで行った。


ランチまでは毎日の日課である、手洗い洗濯をした。
自分の手で一枚一枚向き合っていると、日本では感じなかった服への愛着が増していった。
この服が、私を守ってくれているのよね、そんな感情が湧くのだった。

窓辺に吊された光景に私は満たされていた。
日本には…この数十倍もの服がクローゼットにビッシリだ。
なのに、満足感はなく、毎月買っては一時の喜びに時間とお金を手放していたとは、、

今、私は最高に満たされていた。
手絞りのTシャツ2枚と短パンを眺めながら。


楽しみなお昼ご飯。
おやっさんの店に着くと、タラの一種の白身魚があると言われ、ムニエルを頼んだ。

「昨日は、ランチをありがとうごさいました。最高に美味しかった。宮殿の庭のレストランで食べました」

つなぎ合わせて…頑張って言った。


「最高なのはわかるよ。嬉しいよ」
微笑むと、厨房へ戻った。


ムニエルは、想像以上の美味しさで私を喜ばせた。
甘味のあるツルッとした白身魚は、大好物。オイリーだが酸味のあるソースがかけられて、口に入れては目をギュッとつぶってうなった。
えぇ、それはそれは美味であった。


食後、いつものように本を読んで休んでいた。
ふと顔を上げると、隣の店のテーブルで私と同じく、本を手にゆっくりしている白人男性と目が合った。

しばらく、何度か目が合っていた。
すると、会計を済ませた彼は、こちらへニコニコしながら近づいて来た。

ニタニタではなく、とても友好的に爽やかに!だった。

私のテーブルの一歩手前、、
まるでそこに門があるかのごとく止まると、「やぁ!」と柔らかな‥スペイン人とはちがう、、風に抜けるようなスペイン語が届いた。

そこからは一歩も動かないで。

「こんにちは」
私はニコリとして返し、本を閉じた。


…店の中から、おやっさんはチラチラ様子をうかがっては、忙しく手を動かしている(ように)していた。