転写因子の機能欠損の影響は、ES細胞の状況で変化する。
2021/01/14
哺乳類は、動物進化の過程で、新規機能遺伝子の獲得に必ずしも依存せず、多数かつ多様な転写因子の組み合わせによる遺伝子発現へと進化した。
転写因子蛋白の多様な組み合わせの妙により、細胞分化の命運が決定され、動物は、ヒトを頂点とした多様な臓器の獲得をなし遂げた。
しかし、一つの受精卵が、どのような仕組みで、多様機能を持つ動物を作り出すのか?
目まぐるしくカスケード状態で変化する細胞分化の研究のために、人工的に機能をコントロールできるES細胞が使われている。
ES細胞を用いた細胞発生の研究は、さらに再生医学、人工臓器への研究につながる。
さらに、転写因子の研究は、がん研究と治療にもつながる。
つまり、細胞増殖に関与する転写因子を特定して、その機能を抑えれば、抗がん剤としての展望が出てくる。
転写因子は、細胞増殖に向けた指令のみでなく、逆に遺伝子転写を抑えるように働く場合もある。
人のガン研究においても、転写因子に関する知見の集積が盛んに行われている。
転写因子の遺伝子同士が相互に融合するなど、遺伝子が構造的に変化してしまう細胞の中には、不死化能力を獲得して、異常細胞となるものがある。
こうした細胞は、細胞の増殖停止の機能が壊れ、無限に増殖可能ながん細胞である。
ES細胞は、多能性の維持と、自己増幅の能力を持ち合わす。
相反する方向に向かう機能を秘めた状態で待機するES細胞は、そのように制御するような人工的条件付けた成果である。
つまり、ES細胞は、分化できる条件が整えば、多能性能力を発揮して分化が進み、自己複製能を失う。
成体には、胎生期に発生した細胞が、胎児の全身にばらまかれ、その細胞はその臓器に定着し、維持されることがわかってきた。
成体においても、多能性を秘めかつ自己増幅が可能な細胞がいる。
これらの細胞は、その成体の一生涯にわたり機能し、状況に応じて分化し、新たな細胞へと分化していく。
さらに、一旦、分化した後も、元の多能性を秘めた能力の細胞に戻り維持できることもわかっている。
そうしたタイプの細胞研究が進んでいるのが、各臓器ごとに姿を秘めて存在するマクロファージである。
さて、話題を元にもどして、丹羽先生のグループによる、2020年の論文を、再度、取り上げてみましょう。
この論文のおおまかは、すでに当ブログの記事になっています。
Exp Cell Res 2020 Nov 1; PMID32918898
"MEAF6 is essential for cell proliferation and plays a role in the assembly of KAT7 complexes "
エッセンスは、By elimination of Meaf6, proliferation ceased although histone acetylations were largely unaffected. In the absence of Meaf6, one of the Myst family members Myst2/Kat7 increased the ability to interact with PHD-finger proteins.
上記論文は、ES細胞において特定の遺伝子構造を改変させた研究である。
転写因子蛋白は、組み合わさって集合体として行動するため、それぞれ各蛋白の働きを分けて評価することが難しいが、そうした難題に、研究者たちは取り組んでいる。
転写因子を改変させた時、それぞれのES細胞には、どのような影響があるかを見ている。
上記論文では、遺伝子操作の手段として、あのクリスパーキャス9システムを用いている。
機能欠損の無いワイルドタイプのES細胞であれば、人工的操作(ES用培地)により、自己複製と、多能性維持は両方とも保持されている。
ところが、遺伝子構造異常の起きたES細胞では、自己複製と多能性維持能に対してなんらかの影響が出る場合がある
つまり、従来のES細胞とは異なる遺伝子の動きとなる。
自己複製と、多能性維持の制御機能は、ES細胞なら皆、同一とは限らないのである。
DNAに結合する転写因子集合体の一部を人工的に欠損させたES細胞において、そのES細胞の自己複製能と、多能性維持能への影響を、上記の論文は調べている。
そして、自己複製能と、多能性維持能は、それぞれ別々に影響を受けていることが示された。
自己複製能と、多能性維持能は、それぞれ独立的に制御を受けている現象を、それぞれに分けて観察することが可能であった。
例えば、多能性維持能には影響が出ずに、自己複製能には影響がでる場合、あるいは、その逆もありうる。
転写因子蛋白は、複合体を形成しながら、DNAに結合するが、例えば、ある転写因子が、他種の足場蛋白などに結合すると、むしろ、転写機能を抑える方向で働くものがある。
つまり、ある種の転写因子が結合すると、その転写因子が結合することで、むしろ、HAT活性を抑えるタイプがある。
どの転写因子の欠損時には、細胞にどのような影響が出るか?を丁寧に調べることで、転写因子の相互関係が明らかになる。
どのような機序が関係して、細胞の多能性と、自己増幅への影響となるのか?については、研究者は必死にその機序を追おうとするだろう。
しかし、機能する蛋白を追う仕事は、困難で、全貌は解明できない。
上記論文は、そうした各転写因子の機能を探ろうとする類いの研究である。
この論文では、Meaf6と呼ばれる転写因子の機能を知るために、人工的条件下で、Meaf6蛋白合成を停止するES細胞を作り出した。
この細胞は、タモキシフェン存在下で、Meaf6と呼ばれる転写因子の働きがブロックされるように仕組まれている。
この研究でわかったことは、転写因子Meaf6は、細胞の増殖に影響を与えるが、分化への影響は低いという事実である。
Meaf6を欠損させたES細胞では、増殖は止まるが、HAT活性は維持する。
つまり、Meaf6は、ES細胞の増殖に関与するが、ES細胞の分化には影響が薄い。
Meaf6を欠損させたES細胞では、HAT活性(ヒストン蛋白のアセチル化を起こして遺伝子を発現させる)への影響は低かった。
さらに、Meaf6を欠損させたES細胞では、むしろ、足場となる他の転写因子蛋白への結合能が増強したとの結果であった。
Meaf6は、転写に必要な転写因子複合体の形成を低下させる可能性を示した結果であった。
すなわち、Meaf6が転写活性を調節する機能を持ち合わす可能性を指摘したものだろう。
Myst family members Myst2/Kat7 increased the ability to interact with PHD-finger proteins
(補 ヒストンアセチル化酵素とは、ヒストン蛋白のアセチル化を起こして遺伝子発現を進ませる。Hat活性と呼ぶ Acetylation of core histones are mediated by histone acetyltransferase (HAT) activity )
The MYST (Moz, Ybf2/Sas 3, Sas 2, Tip60) family is one of the five main HAT/KAT families and is conserved in eukaryotes [2]. It has been reported that the Myst family members are involved in transcriptional regulation, DNA replication and DNA damage response via the acetylation of Histone H3 and H4.
Meaf6欠損ES細胞は、2細胞期に発現する遺伝子として知られる Zscan4遺伝子発現を増強させた。
2細胞期に発現する遺伝子は、DNA修復など複数のパスウエイがあるが、Meaf6欠損ES細胞は分化には影響が薄いのである。
016年のCDB研究で、以下がある。
ニュースNews
CDBからのニュース、お知らせを掲載しています。
ES細胞のテロメア維持機構に新たな知見
2016年03月18日
>多能性マーカー遺伝子の発現とZscan4の発現との関係も調べたが、これらの間に相関性は見られなかった。このことは、Zscan4によるテロメアの修復は、多能性の維持機構とは独立して働いていることを示唆していた。
「ES細胞は不均一な集団であることが近年分かりつつあります。・・・
上記の研究内容は、今は新規科学であっても、やがて理論が固まって一般的理解が容易になり、子どもたちが義務教育の場で学ぶようになる。
いまだ、転写因子の役割は、教科書的な知識とは言えないが、いづれ理科の教科書に載るようになる。
さすがにそうなったら、ため息ブログメンバーも、当ブログの記載がデタラメとは言えなくなるだろう。
生き物である個々の細胞は、各細胞ごとに、生き延びるための命運を模索する。
細胞同士は、協力しあっても、ひとつひとつ動きは違う。
人工的に遺伝子を挿入しても、iPSになれる細胞は一部にすぎないし、生存に適したものだけが生き残る。
細胞が危機に遭遇して、生存に向けた模索の時、転写因子の組み合わせの妙に成功した細胞が生き残ることになる。
STAP細胞の元になった細胞が、特殊な遺伝子制御を示す細胞であった可能性はいくらでもあるのだと思う。
この世界は、まだまだ、不明に満ちている。
OoboeさんもZscan4遺伝子とテロメアとの関連に言及していた。
Zscan4さんからもいろいろコメントをいただきたい。
転写因子蛋白の多様な組み合わせの妙により、細胞分化の命運が決定され、動物は、ヒトを頂点とした多様な臓器の獲得をなし遂げた。
しかし、一つの受精卵が、どのような仕組みで、多様機能を持つ動物を作り出すのか?
目まぐるしくカスケード状態で変化する細胞分化の研究のために、人工的に機能をコントロールできるES細胞が使われている。
ES細胞を用いた細胞発生の研究は、さらに再生医学、人工臓器への研究につながる。
さらに、転写因子の研究は、がん研究と治療にもつながる。
つまり、細胞増殖に関与する転写因子を特定して、その機能を抑えれば、抗がん剤としての展望が出てくる。
転写因子は、細胞増殖に向けた指令のみでなく、逆に遺伝子転写を抑えるように働く場合もある。
人のガン研究においても、転写因子に関する知見の集積が盛んに行われている。
転写因子の遺伝子同士が相互に融合するなど、遺伝子が構造的に変化してしまう細胞の中には、不死化能力を獲得して、異常細胞となるものがある。
こうした細胞は、細胞の増殖停止の機能が壊れ、無限に増殖可能ながん細胞である。
ES細胞は、多能性の維持と、自己増幅の能力を持ち合わす。
相反する方向に向かう機能を秘めた状態で待機するES細胞は、そのように制御するような人工的条件付けた成果である。
つまり、ES細胞は、分化できる条件が整えば、多能性能力を発揮して分化が進み、自己複製能を失う。
成体には、胎生期に発生した細胞が、胎児の全身にばらまかれ、その細胞はその臓器に定着し、維持されることがわかってきた。
成体においても、多能性を秘めかつ自己増幅が可能な細胞がいる。
これらの細胞は、その成体の一生涯にわたり機能し、状況に応じて分化し、新たな細胞へと分化していく。
さらに、一旦、分化した後も、元の多能性を秘めた能力の細胞に戻り維持できることもわかっている。
そうしたタイプの細胞研究が進んでいるのが、各臓器ごとに姿を秘めて存在するマクロファージである。
さて、話題を元にもどして、丹羽先生のグループによる、2020年の論文を、再度、取り上げてみましょう。
この論文のおおまかは、すでに当ブログの記事になっています。
Exp Cell Res 2020 Nov 1; PMID32918898
"MEAF6 is essential for cell proliferation and plays a role in the assembly of KAT7 complexes "
エッセンスは、By elimination of Meaf6, proliferation ceased although histone acetylations were largely unaffected. In the absence of Meaf6, one of the Myst family members Myst2/Kat7 increased the ability to interact with PHD-finger proteins.
上記論文は、ES細胞において特定の遺伝子構造を改変させた研究である。
転写因子蛋白は、組み合わさって集合体として行動するため、それぞれ各蛋白の働きを分けて評価することが難しいが、そうした難題に、研究者たちは取り組んでいる。
転写因子を改変させた時、それぞれのES細胞には、どのような影響があるかを見ている。
上記論文では、遺伝子操作の手段として、あのクリスパーキャス9システムを用いている。
機能欠損の無いワイルドタイプのES細胞であれば、人工的操作(ES用培地)により、自己複製と、多能性維持は両方とも保持されている。
ところが、遺伝子構造異常の起きたES細胞では、自己複製と多能性維持能に対してなんらかの影響が出る場合がある
つまり、従来のES細胞とは異なる遺伝子の動きとなる。
自己複製と、多能性維持の制御機能は、ES細胞なら皆、同一とは限らないのである。
DNAに結合する転写因子集合体の一部を人工的に欠損させたES細胞において、そのES細胞の自己複製能と、多能性維持能への影響を、上記の論文は調べている。
そして、自己複製能と、多能性維持能は、それぞれ別々に影響を受けていることが示された。
自己複製能と、多能性維持能は、それぞれ独立的に制御を受けている現象を、それぞれに分けて観察することが可能であった。
例えば、多能性維持能には影響が出ずに、自己複製能には影響がでる場合、あるいは、その逆もありうる。
転写因子蛋白は、複合体を形成しながら、DNAに結合するが、例えば、ある転写因子が、他種の足場蛋白などに結合すると、むしろ、転写機能を抑える方向で働くものがある。
つまり、ある種の転写因子が結合すると、その転写因子が結合することで、むしろ、HAT活性を抑えるタイプがある。
どの転写因子の欠損時には、細胞にどのような影響が出るか?を丁寧に調べることで、転写因子の相互関係が明らかになる。
どのような機序が関係して、細胞の多能性と、自己増幅への影響となるのか?については、研究者は必死にその機序を追おうとするだろう。
しかし、機能する蛋白を追う仕事は、困難で、全貌は解明できない。
上記論文は、そうした各転写因子の機能を探ろうとする類いの研究である。
この論文では、Meaf6と呼ばれる転写因子の機能を知るために、人工的条件下で、Meaf6蛋白合成を停止するES細胞を作り出した。
この細胞は、タモキシフェン存在下で、Meaf6と呼ばれる転写因子の働きがブロックされるように仕組まれている。
この研究でわかったことは、転写因子Meaf6は、細胞の増殖に影響を与えるが、分化への影響は低いという事実である。
Meaf6を欠損させたES細胞では、増殖は止まるが、HAT活性は維持する。
つまり、Meaf6は、ES細胞の増殖に関与するが、ES細胞の分化には影響が薄い。
Meaf6を欠損させたES細胞では、HAT活性(ヒストン蛋白のアセチル化を起こして遺伝子を発現させる)への影響は低かった。
さらに、Meaf6を欠損させたES細胞では、むしろ、足場となる他の転写因子蛋白への結合能が増強したとの結果であった。
Meaf6は、転写に必要な転写因子複合体の形成を低下させる可能性を示した結果であった。
すなわち、Meaf6が転写活性を調節する機能を持ち合わす可能性を指摘したものだろう。
Myst family members Myst2/Kat7 increased the ability to interact with PHD-finger proteins
(補 ヒストンアセチル化酵素とは、ヒストン蛋白のアセチル化を起こして遺伝子発現を進ませる。Hat活性と呼ぶ Acetylation of core histones are mediated by histone acetyltransferase (HAT) activity )
The MYST (Moz, Ybf2/Sas 3, Sas 2, Tip60) family is one of the five main HAT/KAT families and is conserved in eukaryotes [2]. It has been reported that the Myst family members are involved in transcriptional regulation, DNA replication and DNA damage response via the acetylation of Histone H3 and H4.
Meaf6欠損ES細胞は、2細胞期に発現する遺伝子として知られる Zscan4遺伝子発現を増強させた。
2細胞期に発現する遺伝子は、DNA修復など複数のパスウエイがあるが、Meaf6欠損ES細胞は分化には影響が薄いのである。
016年のCDB研究で、以下がある。
ニュースNews
CDBからのニュース、お知らせを掲載しています。
ES細胞のテロメア維持機構に新たな知見
2016年03月18日
>多能性マーカー遺伝子の発現とZscan4の発現との関係も調べたが、これらの間に相関性は見られなかった。このことは、Zscan4によるテロメアの修復は、多能性の維持機構とは独立して働いていることを示唆していた。
「ES細胞は不均一な集団であることが近年分かりつつあります。・・・
上記の研究内容は、今は新規科学であっても、やがて理論が固まって一般的理解が容易になり、子どもたちが義務教育の場で学ぶようになる。
いまだ、転写因子の役割は、教科書的な知識とは言えないが、いづれ理科の教科書に載るようになる。
さすがにそうなったら、ため息ブログメンバーも、当ブログの記載がデタラメとは言えなくなるだろう。
生き物である個々の細胞は、各細胞ごとに、生き延びるための命運を模索する。
細胞同士は、協力しあっても、ひとつひとつ動きは違う。
人工的に遺伝子を挿入しても、iPSになれる細胞は一部にすぎないし、生存に適したものだけが生き残る。
細胞が危機に遭遇して、生存に向けた模索の時、転写因子の組み合わせの妙に成功した細胞が生き残ることになる。
STAP細胞の元になった細胞が、特殊な遺伝子制御を示す細胞であった可能性はいくらでもあるのだと思う。
この世界は、まだまだ、不明に満ちている。
OoboeさんもZscan4遺伝子とテロメアとの関連に言及していた。
Zscan4さんからもいろいろコメントをいただきたい。
ES ≒ STAP-SC ≒ FI-SC > TSC > STAP でした。
STAPはESの半分程度
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