がんについての科学的発見の歴史を書いた以下の著を紹介した。
がん -4000年の歴史― シュダールタ・ムカジー著 早川書房
その続きである。

251頁に、サブタイトル “危うい予測”がある。
このタイトル通りに、未知なる研究の最先端では、実験当初は全貌が明らかでないが、後になると解明が可能になるのである。
つまり、実験者も夢中になって実験している時には、その問題点に気づくことができない。
生物科学の研究室においては、新規細胞は、いづでも不可解な現象が起きうる。

著者らは、新発見として発表したとしても、後に実験を進めていく間に、新たな発見が加わることがある。最初に出した実験結果の一部に思い違いがあったことに気づくことがある。
そうしたエピソードが上記の著書で語られている。

STAP細胞も論文通りの機能再現は不可能であったが、新規細胞を扱う実験であっただけに、再現性に乏しい危ういリスクがあった。
従来、そうした不安定性は、専門者間で議論されるべきことでありながら、STAPの場合はそうならなかった。
実際には、従来には無かったような専門的知識の一般化現象が起き、誤解も陰謀も渦巻くねつ造騒ぎが起きてしまった。これを画策したのは、科学者層の一部であるが、知識の薄いマスコミを利用したのである。

細胞の場合は、その時だけ存在しうる細胞があるだろう。
遺伝子制御が従来の細胞とは狂ってしまった細胞がその時だけ、存在する可能性だ。

遺伝子制御の狂いを、人類がコントロールがするにはまだまだ知識不足の状態と言えよう。
なぜ特定の細胞だけ、特殊の遺伝子制御になっているかの解明も道半ばだ。

専門家であれば、何がわかって、何が不明のままか知っているが、一般人が抱く”にわか知識”では、多くの誤解がおきるだろう。
そうした誤解を利用して、STAP細胞の否定を煽った科学者層がいた。
彼らは、遺伝子DNAの類似性を持って、STAP細胞はESだと断定した。
生き物たる細胞は。遺伝子が変異し続けるわけだし、検査精度の限界もある。
本来、遺伝子DNA構造で、細胞の同一性を論じることも難しいはずである。遺伝子DNAが同一のクローン細胞だって作れる。
しかし、一般人はそこまで詳しくない。専門家が言うのだから正しいと信じてしまう。
専門家が、何かを画策して社会を動かそうとすれば、それが可能になってしまうのである。
STAP細胞に関しては、科学に詳しくない一般人を巻き込んで、研究者たちが誤った方向へ人びとを導いた。

盛り上がる社会の誤解を解くために、理研は再現実験が行ったが、再現は同一マウスの準備もできず、厳密な意味では再現などではなかった。
小保方氏が酸浴後幼弱化を起こした実験をしても、それは再現の成功とは程遠いとされてしまった。
一般人、マスコミは、再現実験は実験の肯定や否定にはならないとは思わず、再現できなければ、STAPはねつ造だと決めつけたのである。

不安定な再現実験を、理研があえて行ったのは、保存サンプルの正当性が担保されていないことがわかっていたからであろう。
結局、保存サンプルの解析を、一部学者層とマスコミは、共に強く理研にせまった。
この時の理研は、なぜ、こうした下極上の状態になったのであろうか?

若山氏の立場の正当性を主張するために、若山氏自らの保存サンプルを提供した。
酸浴実験を除けば、STAP実験は若山氏の指導により行われていたのだから、若山氏は圧倒的に有利だ。
誤解が渦巻くSTAP事件の渦中で、著者らは、お互いを誤解し合い、疑いし合った。

前回の当ブログで、室内の鍵は実験室で無くしたはずのものなのに、研究者層の誰かが強引に、室外の街灯の下に鍵があると騒ぎだしたのではないか?と書いた。
この騒いだ研究者層でも、STAP細胞の新規性が理解できず、誤解があったかもしれないのである。

がんの話題にもどるが、上記本では以下のように語られている。

実験に使われていた正常細胞なる細胞が、後になって完全に正常な細胞ではなかったことがわかった事が書かれている。
実は正常細胞なる細胞の実態は、特殊にがんになりやすい細胞であったと、後で著者からが気づくとのエピソードである。

ロバートワインバーグについては、有名ががん学者であり、がん遺伝子、がん抑制遺伝子を発見した人である。ウィキペディアに解説がある。

この頃に盛んにおこなわれた正常細胞からのがん化実験において、観察されたエピソードである。
当時、彼らの研究室では、細胞はなぜがん化するかの疑問についての解明を続けていた。
がんには遺伝子変異が大事であることがわかっていて、さらなる証拠を探す科学的競争は、激しさを増していた時代である。
複数の研究所が、類似する成果を競って発表しあう状態が、1980年初頭から始まっていたとある。
そして、がん化した遺伝子DNAを用いて、正常細胞をがん細胞へと変化させる事が可能である事が発見されたのである。

がんの人から採取した細胞由来断片化DNAを、ヒトの正常培養細胞に入れ込んだ(トランスフェクション)すると、正常だった細胞がフォーカスを形成する。
これは、正常細胞が、際限なく増え続けることのできるがん細胞に変化したことを示す。
この現象は、ワインバーグと大学院生だったシーチアホによる功績と書かれている。

実はこの後、彼らが使用した正常細胞は、後になって、がん化しやすい細胞であったことがわかった。
がん追跡の科学者たちが当初使っていた細胞が、がんになりやすい性質をすでに持っていたのである。
真に正常である細胞では、そこからがんへと形質変換させるには、さらなる数個の遺伝子変換が必要であると、後でワインバーグが述べているそうである。

著者から説明できない現象が、新規の生物実験ではしばしば起きるということだろう。
STAP細胞になぞらえてみると、興味深くはないか?
レター論文に書かれたSTAP細胞は、その時だけ存在した特殊な細胞だったのではないか?