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小保方氏への名誉毀損を認めたBPOの決定に対してNHKは反論し、いくつかのブログ記事では、小保方氏の主張は「大半が退けられている」、「多くが問題無しとされている」や、「名誉毀損とまでは言えない」という少数意見の方が強調して取り上げられている。また、何人ものサイエンスライターが疑問を呈している。これらに対して論評したい。
「結論ありき」ブログ(http://blog.livedoor.jp/peter_cetera/)については、前の記事のコメント欄でかなり書いたがもう一度その問題点を指摘しておきたい。彼らは、小保方氏の7つの主張の内の2つが認められた事について、「小保方氏の主張は大半が退けられている」と述べ、「ゼロイチの判断で言ったら、ゼロではなかったので『勧告』ということでしょう」と結論している。これはあたかも「ほとんど問題がなかった」ということを指摘していることになるが、このような捉え方はおかしい。
例を出せばわかるだろう。石井委員会では、小保方論文の6つの疑惑(研究不正)が検討された(www3.riken.jp/stap/j/f1document1.pdf)。
1.Obokata et al., Nature 505:641-647(2014) 論文
(1)Figure 1f のd2 及びd3 の矢印で示された色付きの細胞部分が不自然に見える点。
(2)Figure 1i の電気泳動像においてレーン3 が挿入されているように見える点。
(3)Methods の核型解析に関する記載部分が他の論文からの盗用であるとの疑い。
(4)Methods の核型解析の記述の一部に実際の実験手順とは異なる記述があった点。
(5)Figure 2d, 2e において画像の取り違えがあった点。また、これらの画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する点。
(6)2.Obokata et al., Nature 505:676-680(2014) のFigure 1b(右端パネル)の胎盤の蛍光画像とFig. 2g(下パネル)の胎盤の蛍光画像が極めて類似している点。
これら6つの点に関して、(1)「不正行為はなかったと判断される」、(2)「改ざんに当たる研究不正と判断した」、(3)と(4)は、「過失によって引き起こされたものであって、研究不正とは認められない」、(5)「捏造に当たる研究不正と判断した」、(6)「研究不正であるとは認められない」という結論であった。もし「結論ありき」氏らの論理を使えば、「疑惑の大半(2/7と2/6の違いはあるが)が退けられており、ゼロイチの判断で言ったら、ゼロではなかったので『研究不正』ということでしょう」となるが、このような結論がおかしいことは誰にでもわかるだろう。要は「ダブルスタンダード」なんである。BPOの勧告に対する見解を「大半が退けられている」というならば、小保方氏の不正についても「大半が退けられている」と述べるべきであり、そうでないと論理が一貫しない。
次に「ため息^2ばかりのブログ」氏であるが、同氏は2月11日の記事で以下の表を示している(http://seigi.accsnet.ne.jp/sigh/blog/?paged=2)。
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審議事項
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審査結果
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小保方側の反応
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NHKの反応
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タイトルでの「不正」という表現の与える印象
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問題なし
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了承
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了承
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専門家の指摘の与える印象
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問題なし*
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了承
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了承
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CGやナレーション、その他演出の与える印象
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独立して評価しない
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了承
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了承
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申立人が若山研究室のES細胞を盗んだという印象を与えるか
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人権侵害あり**
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了承
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了承できない
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実験ノートの引用方法とその放送に著作権法違反があったか
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問題なし
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了承
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了承
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申立人と笹井氏との間の電子メールの放送に問題があったか
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品位がないが問題なし
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了承
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了承
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取材方法に問題があったか
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問題あり
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了承
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お詫びした
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*:冒頭に持ってきたのはフェアでないという委員がいた
**:9名の委員中2名が問題なし(「人権侵害があったとまでは言えない」「委員会があえて名誉毀損とするべきものではない」
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「ため息」氏は「審査結果(勧告)」を、基本的には「問題あり」と「問題なし」の2つに分類している。しかしながら、「勧告」はこのように単純化して述べられていない。例えば「タイトルでの「不正」という表現の与える印象」については、同氏は「問題なし」と分類しているが、勧告では「こうした表現の使用が申立人に対する否定的な印象を与えることは確かであるが、論評として許されないとは言えない」である。「論評として許される」とは書かれていないのだ。この「勧告」を読めばわかるが、ほとんどの表現が「----とまでは言えない」となっており、「問題はない」などとは書かかれていない。そして「勧告」の「結論」では、「人権侵害や放送倫理上の問題があったとまでは言えないが、科学報道番組にふさわしくない演出や、申立人に対する印象を殊更に悪化させるような箇所も見られる」と、指摘された2つの問題以外にも多々不適切な箇所があったことを指摘している。「問題あり」と「問題なし」に単純化して、「問題なし」という項目を多く見せているのは「小保方憎し」のためであろうが、「問題なし」と「問題があるとまでは言えない」では意味が大きく異なるのだ。
詫摩氏についても前の記事のコメントでも少し触れたが、BPO批判の第二弾が出たようなので、彼女の論点の問題を指摘しておく。
まず最初の「STAP細胞をめぐるNHKスペシャル BPO判断に問題はないか?(1)」(https://news.yahoo.co.jp/byline/takumamasako/20170228-00068084/)では、「視聴者が同判断したか」をBPOの委員が「主観」によって判断しているという点に対して、以下のように疑問を投げかけている。
BPOの会見を通しての私の違和感の1つは「委員が想定する視聴者がどう受け止めたか」という二重に主観的な内容が判断材料になる点だ。そうならざるを得ないことは理解できるが、放送当時や放送直後のSNSでの反応や個人ブログでの記事、NHKに寄せられた声など、何らかの委員の主観だけに頼らない根拠が出てくると思っていたのだ(もちろん、この方法にも限界はあるし、調べ方によっては偏ったデータになる可能性は否定しない)。もっと突っ込んだ表現をすれば「委員の主観を裏づける客観的なデータが何も添えられていない」ことに疑問を感じる。
そして、「テレビ朝日ダイオキシン報道事件」においては「報道された地域を産地とする野菜の価格暴落といった「視聴者がどう受け止めたか」を裏づける客観的なデータがあった」と述べている。
一読すると「なるほど」と思えなくもないが、「客観的データがあった」から報道側が敗訴したという詫摩氏の認識は誤っているのではないかと思われる。少なくとも、ネット上で検索する限りでは、最高裁が東京高裁の判決を覆して差し戻した理由は「摘示(=具体的に人の社会的評価を低下させるに足りる事実を告げること)された事実とは、当該報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、判断すべきである」との見解の下、「(報道が)真実であることの証明があったか否かについては、環境総合研究所の調査結果からも、所沢産の白菜わずか一検体からも「真実であるとの証明があるとはいえない」」と結論したからである(http://www.maroon.dti.ne.jp/mamos/tv/dioxin.html)。つまり上にも述べたが、「結論ありき」氏らや「ため息」氏のような、小保方氏の個々の主張が認められたか、認められなかったのかを議論することは的外れで、「放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮」すべきなのである。
詫摩氏は、「STAP細胞をめぐるNHKスペシャル BPO判断に問題はないか?(2)」(https://news.yahoo.co.jp:443/byline/takumamasako/20170306-00068097/)では、「判断にはSTAP研究に対するある程度の知識は必要となる。委員会に誤解はなかったか」と、専門的知識の不十分な理解から委員会が結論したと批判している。
BPOの委員会はSTAP研究が行われていた時期と元留学生のES細胞が発見された時期に、2年以上の差があることを問題視していた。だが、それはおかしいとわかるだろう。勧告書の12ページには「STAP研究から2年以上経過した時点における元留学生作製のES細胞の保管状況」という文言があり、STAP研究が2011年11月に終了したと考えていたようにも読めてしまう。そうであったとすればそれは明らかに事実誤認だ。
そして、「勧告書は「STAP研究から2年以上経過した時点の保管状況に疑問を呈する部分が放送されたのか、その主旨を理解するのが困難である」としているが、「STAP研究が行われている真っ最中」の保管状況を問題にしていたわけだ」と批判しているが、これも的外れである。Li氏の細胞についてあのように報道するならば、NHK側がLi氏の細胞を利用してSTAP細胞が作製されたという根拠(「真実性」)を示す必要があったのである。
「勧告」14ページには、「しかし、これらの事情を超えて、若山氏や遠藤氏の解析対象となったSTAP細胞が、元留学生の作製したES細胞である可能性を裏付ける資料は示されていない。NHKは「留学生のES細胞が、STAP問題に関連していなかったと言うことは科学的には出来ない」という遠藤氏の指摘を引用しているが、可能性が否定しきれないという程度では、摘示事実c」の真実性が証明されたとは言えない。また、摘示事実c」について真実であると信じるについて相当性があることを示す資料も示されていないから、相当性も認められない。」と述べられている。ここでは「
2016年02月
2016年02月11日
「あの日」を読んで
----GFP陽性の細胞はキメラマウスに存在していたが、組織を反映しているというよりも、組織内に散在しているという表現のほうが正しいと思われた。キメラマウスの遺伝子を解析すると、割合は少ないがスフェア由来の遺伝子が存在するキメラマウスも確認された。----既存の多能性幹細胞からできてくるキメラマウスとは見た目の特徴が大きく異なっていた。多能性という既存の定義に当てはめて、このスフェア細胞を見ていいものなのかは大きな疑問であり、新たな解釈が必要であると考えられた。
この記述は、遺伝子解析データが欠落していることを除けば、小保方氏の博士論文の図と合致する(http://stapcells.up.seesaa.net/image/Figures.pdf)。つまり、通常のキメラとは異なっていたので、自己点検検証委員会は「キメラ作製は失敗」と報告書に記載したのだろう。
ところで、「スフェア細胞」に関して私は誤解をしていた。スフェア細胞の研究が発展して「STAP細胞」の発見につながるので、両者は共にストレスによって体細胞から生じ、単に「機械的ストレス」(スフェア細胞)か、「酸ストレス」(STAP細胞)の違いだと私は思っていた。しかしながら、両者はまったく性質が違っていた。「あの日」の記載によると、スフェア細胞は通常の細胞よりも増殖力が強く、浮遊培養で増殖して細胞塊を作れる細胞であるのに対し、STAP細胞は増殖をしない。浮遊培養ができる細胞は、がん細胞のように増殖力が強い細胞であり、一方、通常の細胞は培養皿に接着した状態でしか培養ができない(専門用語では「足場依存性」という)。「がん細胞」に似た増殖力の強い細胞ならば、細胞は未分化の状態、すなわち何らかの「幹細胞」あるいは「初期化されている細胞」である可能性はあり得る話だ。
ということは、小保方氏のTissue論文、つまり博士論文で述べられた、スフェア細胞が「三胚葉由来組織に共通した万能性体性幹細胞」という主張は、あながち「捏造」ではなかった可能性があるように思われる。